通貨発行は現代の打ち出の小づち:予算不足はお芝居なのよ

打ち出の小づち

日本昔話の打ち出の小づちが、今の通貨発行権である

『日本昔話』に見る「打ち出の小づち」を考えます。

英語で「lucky mallet」(幸運のつち)だそう。

日本昔話では、正直で心優しい高齢者の善行に対して、まるで恩給か年金のように天から授けられ、「幸せに暮らしたとさ」のハッピーエンドとなります。

挿し絵に、金銀さんご綾錦(あやにしき)や、大判小判の宝物が輝いています。

個人がお金を出せていいの?

実はまずいのです。

現代の打ち出の小づちは、各国の政府が持ちます。

個人には持たせない。

みんなは小づちを個人が持つ前提で批判するけど

政府の打ち出の小づちと聞いて「そんなのあるわけない」と言い出す者は、個人が振って起きる波乱を恐れます。ミクロ経済で考えると金銭欲が混じり、腹が立つのです。

「打ち出の小づちがあれば働かずに遊んで暮らせるから、働いている僕はたいへん悔しくて胸騒ぎが止まらず不愉快だ、だから存在してはならない」と私情に走ります。

理解には、国のマクロ経済への想像力を要します。

社会性の理解が必要です。

マクロ経済だとどうなる?

お金を増やしてためる蓄財は、国にとって無意味です。

お金を発行できる国が、欲しいのはお金ではないから。

お金だけが出る打ち出の小づちは、意外に制約が多い

お金がたくさん出ても、正直じいさんは食べていくのに困ります。

食料が出ないとだめか!

米と野菜と、たんぱく源の魚介類や肉類も出ないと、幸福になれません。

正直じいさんはお金に困らなくても、お米には困ります。

タイ米を輸入した1994年がそうか

しかも村に商店街やコンビニがないと、スムーズに買えません。

お金が増えても、買う商品も増えて市場もないと、お金が役立ちません。

てことは、江戸時代は物が多かった?

江戸の街は当時世界最大のメガロポリスで、物やサービスは多めに用意されたはずです。今も写真に残る明治初期の風景は、実は江戸の街です。

正直じいさんが江戸の街に出れば、文明の恩恵で色々な物を買えたでしょう。

正直じいさんが物をたくさん買えばどうなる?

街は経済成長します。発行したお金で総量が増え、みんなの所得が増えます。

でも何十万両も爆買いすれば、品薄になり物価が高騰し、お金は暴落します。

正直じいさんは、打ち出の小づちを振れる良性インフレの限界に気づくはず。

そして一人でなく大勢がお金を使う方が、経済成長すると気づくはず。

つまりお金を多く使わない限り、成長ゼロか?

アベノミクス三本の矢の二本はデフレを強め、異次元金融緩和は空回りしました。

政府が国債を発行し、買った市中銀行から日銀が買い戻す。そうして日銀がじゃぶじゃぶ出した準備金は日銀当座預金と呼び、国民が手にするお金とは別ものです。

刷っただけで、ばらまいてない?

そう。次の政策が正解でした。

日銀が市中銀行から買い戻さずに、政府が国民側に支出すればデフレを脱却した

消費者の所持金が増え、買い物が増えてのGDP増が、経済成長の定義です。

お金は蓄財が目的でなく、物の生産が目的で使う

「世に打ち出の小づちはない」と言う者は、お金の存在を何だと思っているのか。通貨を印刷する装置が「打ち出の小づち」だから、世に小づちは通貨の種類だけあるわけ。

そうした思考障害的な感覚は、お金を貴重な資源に見立て崇拝しています。「お金を出し放題なんておかしい」の私情も、拝金主義の表れです。

金庫が空になれば終わりの「財源論」「貨幣のプール論」「金本位制」です。税金は財源でないのに、財源だと思い込めば、重税に陥ります。平成日本がこれ。

政府が出したお金は、究極的に何が目的か

生産力のアップです。

食べていくお金にみえても、本当は食べ物をつくるお金なのです。

食べるお金もないと結局は飢えるけど

違います。食べるお金は政府が発行し、皆にばらまけば足ります。刷り足すだけ。

でも食べ物はボタン押しで刷り足せません。食べ物はデジタルでないから。

つまりー。お金は政府が刷り、食料は国民が育てる。この分担が必須です。

・ 政府が通貨発行で出したお金は、資産ではない
・ お金を投じて生み出した、生産力が資産である
・ 人々はお金で潤わず、生産物やサービスで潤う ← これの意味は複数ある
・ お金は生産力を育てる道具であり、使いまくるのが正解 ← これが日本人は苦手

打ち出の小づちのお金を投じ、自前でエネルギー開発や米や野菜を作り、牛や豚を育てるのが正しい思考です。お金を惜しむ者は勘違い。

「海底ガス田を掘るお金は、誰が出せばペイするか」の問いは無意味です。

どの国も、政府の打ち出の小づちに決まっています。政府支出だけはコスト0だから。

国が採算や効率で考え、お金を倹約するのは、日本だけの壮大な誤りである

記事→ ユニクロ会長の助言は何が間違い?

農業より財テクが儲かる国は傾く理屈

食料を買う国は、売る農業国に足元をみられます。

「食料を売ってやるから、科学研究データを渡せ」と迫られ、共同研究にされ奪われて。

こうして昭和を捨て去る改革で、農業をつぶし、財テクにあこがれた平成は致命的です。

金欠の芝居も、兵糧攻めの一環か

近年の国会で、国民が飢えるようピンポイントで狙った法律が変に多いのは、企業と技術と特許と土地や権利を吐き出させ、外資が巻き上げるレントシーキングです。

「中小企業をつぶせ、町工場を整理し、淘汰せよ」も同じ目的の扇動です。

裏で進む出来事は、要人のハニートラップとマネートラップだと言われます。要人までが女とカネに不自由している原因は、緊縮財政と消費税増税による通貨削減です。

昔話の打ち出の小づちは、現代では政府の造幣です。出したお金は資産ではなく、お金で開発した生産力が資産だと、ロシアウクライナ戦争で明らか。
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