宇宙開発は税金の無駄づかいか:小惑星探査機とアポロ月面着陸

宇宙ロケット発射

宇宙開発の高いコストは、実は国民の税金を使わない

宇宙開発のニュースは明るい話題です。

日本では、種子島からやや太平洋寄りにロケットを打ち上げます。領空侵犯の恐れがあるからです。国際宇宙ステーションへの物資運搬、気象衛星や通信衛星、小惑星探査機はやぶさシリーズも宇宙開発です。

しかし日本に宇宙開発の反対派もいます。最大の理由は税金の無駄づかいです。

「そんなお金があるなら、宇宙に使わず、貧困対策に使ってください」。

言うと思った

出ましたねえ。財源論というやつ。

総量一定のお金を奪い合う思想。「お金をこっちに回せ」の共食いですね。

難しい話のような

簡単すぎて、あくびが出ます。

答を先に言うと、宇宙開発を進めるほど裕福になります。

宇宙開発費用はどうやってつくる?

宇宙開発は、集めた税金では行いません。

政府が国債発行して、市中銀行から発行した新造通貨を投じて行うのです。

素人が考えている宇宙開発 = 国民の税金を集めて、ロケット製造業者に払う
現実に行っている宇宙開発 = 自国通貨を発行して、ロケット製造業者に払う

お金は国民の一存で増やせるのです。実は日本も増やしています。

通貨発行権と呼びます。

なら税金は何のために集める?

通貨が増えると商品が多く買われ、インフレ傾向になります。それが適切な範囲から外れないよう、余りすぎた通貨を減らすのが徴税です。通貨価値の下落を防ぎます。

税金は支払いの準備金ではなく、自国通貨の価値を安定させる目的です。集めて蓄えるのではなく、回収して廃棄します。捨てます。税金は財源ではないのです。

宇宙開発の必要性は、人類の絶滅を防ぐための地球脱出

経済から外れて、宇宙へ行く責務を考えます。

宇宙開発は人類の誰かがやらないといけません。人類の絶滅を遅らせるために、地球脱出が念頭にあります。

太陽は約50億年で使えなくなり、地球は滅びます。太陽が晩年にふくらんで赤色巨星となり、地球の位置を超えるほど半径が大きくなり、地球は太陽に落ちて溶けます。

というのは冗談で、太陽は質量が減っていき、万有引力の低下で地球は太陽から離れます。ただし灼熱地獄で、生物はいなくなっています。

50億年ならのんびりできそうですが、それより早く太陽の恒星成長過程で、地球に寒冷化と温暖化が起きます。最も近い未来の危機は、地球の間氷期終了です。

地球は冷たくなります。

それ聞いたことある

今の地球は氷河期と知られ、その途中の寒のゆるみが間氷期です。間氷期のスタートは、人類文明のスタートにほぼ一致します。令和の今も間氷期です。

世界の文明をさかのぼると、1万数千年前あたりより昔は、人類の痕跡が激減します。痕跡が増える境目が、氷づけマンモスの頃に前後し、間氷期のスタートと推定されます。

間氷期が終われば、一応人類は死滅します。温暖化と違い、寒冷化は植物や野菜も生育せず、草食系の家畜も全滅します。草が茂る温暖化と違い、死の世界です。

人類だけでなく地球が終わる?

そこで宇宙へ出る計画があります。技術がない国民は絶滅します。SF映画ならロケット乗っ取りや、スパイがハイジャックするバイオレンスアクションになりそうで。

その時に、若い男女が結ばれたり、倦怠期の中年夫婦がよりを戻したりしますが、その前に世界大戦が起きるでしょう。

日本は何ができる?

日本初の人工衛星は1970年で、以後かなりの数のロケットを打ち上げています。軽い人工衛星は重さ30キロ、最大は輸送コンテナのこうのとりが16トン以上。

外国の人工衛星打ち上げも受注していますが、人を輸送する技術はまだなく、宇宙開発費を激増させる必要があります。

アメリカのアポロ計画が、ソ連のルナ計画に勝った理由

過去の宇宙開発のお金も、打ち出の小づちで新造しました。国債発行で造幣します。

別に宇宙に限らず、保育所をつくるのも、国会議員の報酬も国債発行です。

だからロケットを打ち上げても、誰のふところも痛まないのです。ロケットを打ち上げるたびに、通貨を新発行した額だけ、国民側がつかむお金が増えます。

民間の持ち金であるマネーストックに、どんどん加わるだけ。

宇宙開発が盛んになると市場にお金が増え、関係が遠いラーメン店や釣り具店や手芸店の売上にも流れ込み、国民の暮らしが上向きます。

それ絶対に理解の壁になる

お金を使う政府が自らお金を生むなんて、すっごく違和感があるでしょう。それはお金をどこまで生めるか、上限を知れば理解できます。

お金を発行できる上限は、国内で商品を作って売る、供給能力を少し上回るまでです。

自国に材料と技術と、精度よく量産できる工場があれば、自国通貨を用意して買えば済みます。完全に内製化すれば国内で完結して、ロケットがタダで手に入ります。

国内だけで売買を完結させるのがミソか

宇宙コストを発行する前提条件として、必要な商品供給力は実は2種類あります。

ひとつは政府から受注したメーカーが、ロケット本体やエンジンを作る力です。

もうひとつは国民が買い物する家具や楽器や、望遠鏡やバイクや高級料理を、各メーカーが作る力です。

それどういうこと?

政府が発行したお金は、ロケット業者から国民へ渡り、買い物に使われます。商品がふんだんにあると、お金がだぶつかず、インフレ率が上がりすぎず、通貨価値が保てます。

もし商品がさっぱり足りないと、お金は役目を失い、紙くずへと向かいます。

ルナとアポロの差はそこだった?

ソ連のルナ計画に遅れたアメリカのレインジャー計画とアポロ計画が、なぜ人類月面着陸の競争に勝ったか。アメリカ国内にはお金の使い道があったからです。

だから、アメリカの方がお金という金券を多く出せました。

「アメリカの方が金があった」は、あいまいな言い方です。

ソ連も自国通貨ルーブルを刷り、アメリカより多額を持つのは楽々でした。でも2種類の商品生産力が追いつかないと、買う物がないからお金は紙くずになろうとします。

お金は消えずに市場で再使用されるからか?

買い物する楽しいコースがないソ連では、お金をアメリカほどは刷れず、資金不足に泣きました。宇宙関連技術自体は、ソ連の方がかなり進んでいたのに。

ソ連のお金不足は、家具や楽器や望遠鏡やバイクや高級料理が乏しいせいです。アメリカ並みにお金を発行すると、国民の手元でだぶついて価値が下がる落とし穴でした。

統制した共産主義国より、ゆるんだ民主主義国に財力がありました。税収が大きいからではありません。商品がどっさりあるから、お金をどっさり発行できるからです。

現ナマの資金力は関係ない?

国はお金を発行できるから、「お金持ちの国」は意味をなしません。

勝負は、所持金の大小ではなく、新たに刷り足せるお金の大小です。

アメリカ国民はアポロ計画に使う金づくりで、重税に泣いたり貧困化などしていません。ロケットを飛ばすほど、どんどん裕福になっています。

宇宙へ行けば行くほど、宇宙と縁遠い業界の給与や報酬も上がりました。

日本人の感覚と完全に正反対だ

お金持ち国とは、お金を多くためた国ではなく、お金を多く発行できる国です。

工場や研究所が充実し、商品を速く多く作れる国です。アメリカがそれ。

世界2位の日本は、平成に中国にくだされ、4位ドイツにも差を縮められています。

日本の敗因は、お金の発行を罪悪視する新興宗教です。日本で工場や研究所がだぶつくのは、政府がお金を削減した失政です。お金を減らすと全てが止まる。

アポロの頃のアメリカにどういう商品があった?

たとえば車です。

1960年代からのアメリカ車は、豪華で美しいスタイルを誇ります。モータリゼーションの黄金時代として今も動画サイトの花形です。フォード、GM、クライスラーなど。

フォード・マスタング、シヴォレー・コルベット、ダッジ・チャレンジャーなどの魅惑の商品は、ソ連になかったのです。

アメリカ国民が負担したものは何?
・ 国民は、ドル紙幣を多く与えられた (お金を多く持たされる負担)
・ 国民は、国産品の爆買いを果たした (商品を多く買わされる負担)
・ 国民は、国産品の量産工場で働いた (商品を多く作らされる負担)

「ドルを刷って皆に配るから、色々な物を多く買いたまえ」という、行動の負担でした。人々はお金を渡され、買い物を楽しむ義務を強いられました。

各メーカーはせっせと商品開発して量産し、ユーザーはお金で買うことが、国内の全員に課せられたノルマでした。

暮らしを充実させる国民の責務です。貯金して、質素な暮らしに甘んじたらだめ。

政府が国民にぜいたくさせれば、国が富む原理ね?

大きな家に住み、家に美術品を飾り、大きな車に乗り、たくさん食べて運動し、スポーツ観戦して、映画やミュージカルを観て、コンサートに行く負担です。

ジェット機で国内旅行して、国立公園や博物館を見学して、国内のリゾート地を次々と回って、高級ホテルに宿泊する負担です。

「飲んで食べて、歌って踊って、何でも買って体験して、エンジョイしろ」と。

「増えたお金を使わず、エンジョイしないケチ野郎は、クビだ」と。

ケチに徹して沈んだ日本への当てつけかよ

そんな日本人もアメリカの各界のソサイエティーに迎えられると、節約して貯蓄する貧乏暮らしを禁じられたものです。「大きい家に住め」「車は大きいのを買え」と。

「お金は多くやる、だから回りの人を真似て、多く使うように」と。実話です。

宇宙開発にお金を使うと、国内のお金は減らずに逆に増えます。しかし総量一定のお金を分け合う新自由主義が台頭、アポロの勢いは後退しました。
Photo: by SpaceX on Unsplash