本や雑誌が売れない本当の理由は:間違い解説を読む

ベルリンの書店

本や雑誌が売れない理由は、細かく分析しても無意味

売れない本や雑誌の敗因を語る、その馬鹿馬鹿しいお話です。

そんなにバカバカしい?

常に書店に並び売れ筋の老舗雑誌が、次々休刊したのが、特に21世紀からでした。

ファッション雑誌が消え、音楽雑誌が消え、写真雑誌が消え、パソコン雑誌が消えて。

アニメCG雑誌が消え、美術雑誌が消え、スポーツ雑誌が消え、天文雑誌が消えて。

報道コメンテーターの指摘は、まるきり的外れでした。

雑誌が売れなくなった原因は、分析しなくてもわかりきっています。路上テロが増えて、原子力発電所が爆発した原因と同一の平成大不況です。

読者が所得を減らされ、家計の立て直しで本を買わなくなっただけ。金銭的な余裕がなくなり、出費を削減しただけ。定期購読をやめて、店頭での衝動買いもやめて。

あるお客の購入冊数の変化

1996年頃に、ある人はパソコン雑誌を年48冊買い、月刊誌を4冊ずつです。音楽雑誌も年36冊買いました。年84冊ですが、他に雑誌やムックも買い。合計が年90冊くらい。

今から10年前の2010年には、年1冊の特別増刊号だけに縮小していました。90分の1です。その後、ついに年間ゼロ冊になりました。これじゃ本屋さんはつぶれます。

デフレ不況による所得の減少が、雑誌が売れない理由です。それ以外の理由を探して分析しても、話はそれています。教訓もアドバイスも無意味。

最近の本は内容がつまらないとの声も聞くが

そこは注意がいるんですよ。商品の価値が下がる現象は、お金の価値が上がる現象です。それを経済用語でデフレと呼びます。商品がくだらなく思えるのはデフレです。

払うお金より価値が見合わない気がして、より安いものを探し出す。それがデフレ不況という経済衰退そのものです。

人は貧乏になるほど、「この程度ならお金を出すほどでない」の基準を下げてケチになります。お金が出せない範囲が広がる現象を、貧困と呼びます。

手が届かない物は、つまらないと感じる。イソップのぶどうです。

出版社や編集部の能力不足に責任を求めたがる心理

なのに雑誌を語る評論は、ものすごい勘違い、勘違い、勘違いの連続でした。

「時代とのずれを十分刷新できず、読者が離れた」。

「テーマがマンネリで、読者に飽きられた結果では」。

「読者の知的要求に向き合う雑誌に、仕上がっていたか」。

「新しい読者を開拓するには、力不足だったかも知れない」。

どれも納得しそう

違うでしょ。無茶なアドバイスです。

「ひどい不況でも絶対に売れる本を書けば、もしひどい不況になっても必ず売れるはず」式の、無意味な議論ですね。

買うお金がないのに本や雑誌を買う人は、かなり少ない。

普通の人は、お金がないと買わないものです。

今は時代が悪すぎると?

政治が招いたデフレ不況の所得減に加え、強制的な物価引き上げで実質賃金の大幅減少、スタグフレーションに似た状態で、よりよい雑誌企画を考えても無意味ですね。

お客の手に先立つものがない。現にお客は、立ち読みだけは続けていたりします。内容のよさを知っていて。見放してはおらず、買えない経済力に落とされたのです。

世界で日本だけで特殊な異常な経済、それも平成のある日、時の内閣が故意に始めた政策なのに、そこを隠してはいけませんねえ。

本の問題じゃないんだ

ドシャ降り雨天のレースだという事情を伏せて、タイムの遅さを嘆き、選手の努力不足を批判するのは、意地が悪いと思いませんか。

晴天の無風での記録とくらべて、選手たちを叩くのはだめ。

世界有数の経済悪条件という特殊なTPOを、話から外したらだめ。

日本だけが世界有数だってホントなの?

不況でないかのように振る舞う、奇妙な国民の心理

平成に、こうした的を外したフェイク情報が山のように出ました。

車が売れない理由も同じ調子。

ボディーのカラー選択肢を増やし、インテリアを女性の感性にフィットさせる工夫を促す論評は、売れない理由と関係がありません。

映画もそうで、世につまらない映画が増えるにつれ、映画ファンが離れ始めたなど、現実と異なる因果関係を語ってはだめ。

一眼レフカメラ離れも、スマホがあるからではなく、電話として必要なスマホでいいやと妥協を強いられる財力の縮小です。貧困の逃げ道がスマホなだけ。

本当の理由は?

雑誌は、デフレ不況下の緊縮財政と消費税増税で、国民のこづかい銭が減ったから。

車は、デフレ不況下の緊縮財政と消費税増税で、国民の貯金が減ってローンも無理。

映画は、デフレ不況下の緊縮財政と消費税増税で、国民のサイフが軽くなったから。

一眼レフカメラは、デフレ不況下の緊縮財政と消費税増税で、国民がビンボーすぎ。

全て同じ理由か!

緊縮財政と消費税増税が真犯人で、サイフが軽いのです。余裕がないから買わないのに、商品の魅力が落ちた分析は、国民の神経を逆なでしています。

漫画コミックも、当世若者気質の分析は空回りです。買う金がないから買わないだけ。

だから漫画の違法コピーサイトは大繁盛。ワーキングプアがなだれ込みました。

買う金が減ったグラフ

下の一覧は、国内産業が空洞化し、途上国化が進む図です。

30年の差は、日本企業がマヌケだからじゃない(オレンジ色が日本)

そのテーマで本を出せば?

逆の本がたくさん出ています。

「いい暮らしをしたい庶民の強欲のせいで、日本にお金は残っていない」。

「借金を子孫に残したくなければ、消費税率をどんどん上げよ」。

「日本経済が落ちたのは、国民の学歴とスキルや、労働の質が低いから」。

「若者はわがままで、高齢者は老害だから、日本の経済力は落ち込んだ」。

といった、フェイク本がざくざくあります。

経済書って正反対の説が常にあるから

28年続く不景気は、これだけの話なのです。

・ 政府は通貨発行を停止し、通貨減らしを強化し、物が売れずに企業は傾いた

そこで。

・ 政府が通貨発行してばらまき、消費税を廃止すれば、物が売れるようになる

と正しく書いても、国民の間違った思い込みと逆だから売れません。

メジャー出版社は、国を破壊し続ける政府に同調した本で、人々の腑に落ちさせました。

「少子高齢化で国の金庫は空っぽ、働く人は負担増になる」という偽書です。

経済が長期下落する時代の経済書のベストセラーは、必ず経済を下落させるススメです。失われた30年の直前に人気は、当代弁舌王の大前研一氏でした。

雑誌が次々休刊した原因は、平成デフレ不況の買い控えです。雑誌がつまらなく感じるのは、所得減で食うにも困るデフレの典型的な病状です。
Photo: 日本女子経済119番