先進美術館構想は、美術名作を海外へ移転する目的
2018年5月の読売新聞ネット版で配信された、美術館の大改革案を覚えていますか。
『先進美術館構想』『リーディング・ミュージアム構想』と呼ばれるものです。
今となってはレントシーキングとわかる
レントシーカーが目をつけたのが、日本の公立美術館が所蔵する世界の名画名作です。
何があった?
昭和に終身雇用と年功序列と国保など福祉国を目指した日本で、イノベーションが続きました。世界第2位のGDPへと、着々と経済成長したのが1960年代から。
イギリスのエリザベス女王が来日し、「二国で世界をリードしましょう」のスピーチが1975年。ベストセラー書『ジャパン・アズ・ナンバーワン』が1979年。
女王来日の前年、1974年にフランスのルーヴル美術館から『モナリザ』を運び、東京と京都で展示しました。オープニングで田中角栄総理がテープカットしました。田中総理は故意に好景気の政策を進めたので、何度目かの美術ブームが起きました。
私立美術館でのアート蒐集はもっと古くからありましたが、『モナリザ』も刺激となり、公立美術館も世界の名画名作を買い始めました。
バブルの好景気ではゴッホがブームだった
たとえば、近代美術のシュールレアリスムの評論家、瀧口修造が集めたモダンアートが、富山県立近代美術館の瀧口コレクションです。1930年代のお宝群です。
日本では他にも一点豪華主義と言われたミレー、セザンヌ、モディリアニなど、印象主義からエコールドパリまで多く所蔵されています。二点、三点と増やした美術館もあり。
さらに理解の壁のピカソ、ミロ、ダリなどの絵画も少しずつ増やし、意外なほど多くあります。上野の森の美術館で「これもあったのか」と、文化後進国でないと知ります。
一昔前の地方公立美術館も抽象美術を買ってた
歴史名作は増えないので、早い者勝ちです。コンテンポラリーアートを買って更迭された公立美術館のトップたちが複数いたのです。
なぜ館長たちは更迭された?
業界の抽象画への敵視と、税金の無駄とする勘違いの民意です。税金は財源でないから、美術の購入費は住民負担でない。でも皆知らず、戦後日本は重税で空回りしました。
誤解は今も続いてるが
1997年以降の緊縮財政で、日本は自滅して弱り続けました。察知した他国は積極財政で自国通貨を刷り足して、そのお金で日本から美術名作を安く買い取ろうとします。
外資のアートファンドが日本から買い叩き、中東のドバイなどに転売して儲ける。
しかし、日本の公立美術館の展示物や所蔵作品は、今はまだ売り物でない。
それを売り物に変える構造改革か
日本の美術館の名画を吐き出させる目的で、売買を解禁して移転を推奨するわけ。
それが『先進美術館構想』、別名『リーディング・ミュージアム構想』です。
美術品は貧困国から富裕国へと、移動する宿命
『先進美術館構想』の記事に対して、有識者は事態を理解できませんでした。
「思い切った改革で美術界も活性化するぞ」と、まるきり勘違いした肯定意見もみられました。衰退を教唆する謀略だと気づかない、哀れな日本人の思考でした。
反対意見も多かったけど
先進美術館構想への批判の大半が「学芸員に売買ディーラーをやらせる気か」と、やはり的外れでした。
美術品を査定し、売買の手配ができる専門家の不足は焦点ではありません。日本が過去に集めてきた資産を売らされ、身ぐるみはがれるターゲットなのが焦点です。
湿度を下げる空調コストが、通貨削減の国策で厳しくなり、作品が傷み始めた頃です。
外国人画商が代行すれば、突破されちゃうね(笑)
買い叩く側は積極財政で好景気の国です。タックスヘイブン国、中東、中華人民共和国、アメリカやスイスです。投機マネーをだぶつくほど刷った、インフレ好況の国です。
お金を発行してばらまき、お金がじゃぶじゃぶで、うなっている国が日本を買う。
国策で金欠にされた日本の美術館を、金満国たちが刷り足した札束でひっぱたく。
お金なんて、公式に刷れば好きに増やせると、外国は知っていて日本は知らない。
日本人はなぜ理解できない?
失われた34年と同じです。郵政民営化にだまされた理由と同じ。
お金を天然資源と勘違いし、人工的に増やせるとの知識がない。
日本に国民を洗脳したワルがいるわけ?
法制化に関わる議員や家族が、仲介する企業や財団に就職や天下りして、手数料が転がり込む仕掛けです。
この不労所得獲得は、途上国や植民地に多いビジネスモデルです。資産家は政府と組み、濡れ手に粟の政商たちなのです。
美術の経済波及効果を、日本が活かせない理由も同じ
新自由主義とグローバリズムの手口なので、西欧諸国もやられています。
フランスは先進美術館構想と逆に規制強化し、譲渡売買を禁止しました。国宝を手放すと、イメージダウンで国際的にリスペクトされず、貧乏国に落ちてしまうから。
美術ってそんなに経済波及効果があるの?
芸術の都パリの根拠は、ゴッホ、セザンヌ、ピカソ、ミロ、ダリらが集まった歴史より、イタリアの作品『モナリザ』を持つ決定的な強みです。
1519年にフランソワ1世が、レオナルド・ダ・ヴィンチの弟子から絵を買いました。
現代アートならアメリカのイメージが強いけど
ニューヨーク近代美術館が20世紀抽象の先駆ピカソ『アビニョンの娘たち』を買って、流れが変わったのです。ドガを売って資金をつくったエピソードがあります。
日本ならドガが惜しくて考えもしない
20世紀最大の傑作ピカソ『ゲルニカ』も、ニューヨーク近代美術館にありました。
仮置きだったので、スペインのプラド美術館に返還され、プラド美術館の品ぞろえと合わなくて、国立ソフィア王妃芸術センターへ移しました。すると来館者数が逆転して。
日本もジャパンマネーで追いかけたのか
だから外資は、日本の国会に売却禁止法をつくらせまいと圧力をかけるはず。二次大戦の敗戦国である日本は、令和の今も法律制定に連合国のチェックを受けます。
このように政策の裏には常に強欲なビジネスパーソンが入り込み、国会議員を資金提供や利益供与でコントロールし、他国の法律を規制緩和させてきました。
緊縮財政で「貧すれば鈍する」の日本は、花より団子の心情にあり、地方交付税交付金を故意に下げたせいで、地方美術館の名画名作を投げ売らせる商戦が迫ります。
日本は特に美術が苦手な人が多いし
ピカソやミロやポロックを「絵の意味がわからない」と言い続ける日本人。
東芝が世界の目にいかに宝物かを知らないから「クソ企業はいらねえ」と言うあの調子。お金しか頭にないから、自分がわからない作品を海外に売れと言い出す確率が高い。
「税の無駄づかい」を前面に出した美術批判キャンペーンが仕組まれると、国民は金に目がくらみ、理解及ばぬ名画名作を投げ捨て、あこがれの現金に替えたがるはず。
公的資金は、刷ればタダで用意できることを、日本人は知らないから。
税金と芸術は、同じくらい理解の壁か
日本人の芸術コンプレックスや美術敬遠は、戦後の貧困化で起きたのです。
ニセコ放棄や、ハウステンボス放棄に続いて、名画の放棄も予想できます。
猫に小判か
「俺たちゃ、スキーやテーマパークへ行く金なんかねえよ」。
「わけわからんアートなんて、とっとと海外に売っちまえ」。
「絵ならまた描けばいい、しかし紙幣は二度と手に入らん」。
国民的な人気の漫画やアニメも、緊縮財政と消費税増税の通貨削減で、日本人客の可処分所得が減りすぎて維持できない状態です。
それで国内のアニメは没落して、海外流出しています。没落を急ぐために、アニメーターに多い零細事業者を破産させ、技術を売り崩すインボイス制度が強行される流れ。
政府が出せば増えるデジタル数字が、現代のお金です。それがなぜか日本だけが底をつくという謎のお芝居に、国民は今もだまされています。
他国はボタンを押しては数字を発行して、円と換金して日本の富を奪い取ります。
奪った国は他国への売却を法規制し、自国通貨を刷り足して維持費は無限にある。
お金なんて、公式に刷れば好きに増やせると、外国は知っていて日本は知らない。