ゾンビ企業という呼称は、企業が対象の選民思想
一般にゾンビとは、殺しても殺しても生き返る死者です。
赤字で業績不振の会社をゾンビ企業と呼んでつぶす政策で、何が起きるのか。
今ある老舗の名門企業も、創業当時につぶされていて、存在しない理屈です。
みんな、そんな想像力もないわけか
画家ゴッホへの、現代人の甘い考察と似ています。
ゴッホは日本で一番人気だけど
知られた史実ですが、ゴッホは生前に1枚しか絵が売れていません。
買った人は、ゴッホが絵を描いて差しあげた詩人ウジェーヌ・ボック氏の姉です。知人の親族に何とか400フランで買ってもらえた、その1枚が生涯の全リザルトです。
ゴッホの周囲の人たちが、彼女に「買ってやってくれ」と嘆願しました。嘆願した協力者たちも、自身はゴッホの絵を買わなかったわけです。
あんな美しい絵を、なぜみんな買わなかった?
どう見ても美しい絵でないからです。買うに値しないと、みんなが判断しました。
ゴッホは絵を周囲に進呈しましたが、ありがた迷惑で捨てた人もいるはず。
パリの画商ヴォラールは、ゴッホ没5年の1895年頃に回顧展を開きました。開いた以外に記録がないから、ゴッホは時代から相手にされなかったゾンビ画家とわかります。
ゾンビ画家が今は永遠の巨匠ってわけか
今になってゴッホをほめそやす者たちは、勝ち馬に乗っている面もあります。
ネームバリューが確立された後世の結果を見計らって、絶賛しているのです。
その証拠に今、現代のゴッホに相当する怪異で不快感がある新人画家を、やっぱり現代人は相手にしないで終わっています。
特に日本の場合、優れものの選別は外国にやらせて、自分はやらない。
画商たちも「買うに値しない変な絵は、うちは扱いません」ときっぱりした態度。
要するにゴッホの名前に魅了されてるだけ?
ゴッホを美しい画家と呼ぶ時点で、価値ありの定義にほだされ、絵をよく見ていません。
20世紀になって美の概念に背いた価値観で見直した、19世紀の異端がゴッホです。
ネームバリューがなくても自ら判断していく態度は、皆さん昔と同じでやっぱり乏しい。人類は過去に学ぶことができず、脳内は成長しないままなのです。
成長のない証拠のひとつが、軽く「ゾンビ企業」と言い放つ差別的な対応です。
どの企業に未来があるかは、実は誰にもわからない
企業の中にもゴッホと似たような、うだつのあがらない、ショボくて情けない会社があります。「もう終わってる、つぶせ、消えろ」と言われるダメ会社。
つぶしたいダメ会社、ゾンビ企業の典型が、1994年頃のアメリカのApple社でした。
iマック以前はゾンビ企業だったね
創業者のスティーブ・ジョブズ氏を社から追い出し、クラッカー菓子の大企業ナビスコ社のCEOに来てもらったけれど、アップル社は再建できませんでした。
米マイクロソフト社が『シカゴ計画』と呼ぶ『Windows 95』を出す前後です。しまいにマイクロソフト社はアップル社に出資して助け、95のPCブームで流れも変えました。
「だめな企業はつぶせ」と言うご意見番は、歴史も知らずテキトーなのです。
世間知らずたちが引っかかって、ゾンビ企業つぶしを推しているわけ。
でも選択と集中が大事だと聞くが
歴史を全く無視した、ひとりよがりの発想が「選択と集中」です。
何がイノベーションで誰が実現するか、未来が読めるわけはない。
当時の有望株にゴッホは入らなかったのだし
「僕なら当時、ゴッホの作品を買い込んで大儲けできたよ」という意識高い系。あくまでも結果を知った後で、態度を変えるのが早いだけなのに。
芸術関係に関わる人たちは「将来性のない企業」という言い方に「神じゃないのに見分けられるわけない」とハッタリや軽薄を感じ取るでしょう。
いつか大化けする可能性は全企業にあると同時に、絶賛されたエリート企業が粉飾されたイカサマだった結末も、しばしば起きています。
しかも判定は能力給方式と同じ害で、評価にひいきや情実が混じり公平なわけもなく。
ゾンビ企業をつぶして儲ける、金融ビジネスの構造
ゾンビ企業をつぶす音頭をとる者の思想は、新自由主義とグローバリズムです。
企業の資産を崩して、安く巻き上げて転売し儲けを出すビジネスモデルです。社会の利益でなく、自分の利益。ミーイズム。今・金・自分だけ。
てことはゾンビと言われる企業こそが有望株?
日本もまた、小企業の活力が産業の強みになってきました。
『ジャパン・アズ・ナンバーワン』は、財閥系グループ企業の勤勉で堅実な拡大再生産とともに、中小企業の自由度と粘り強さが分担して実現したイノベーションでした。
カリスマご意見番たちが言う「馬鹿がやる底辺の仕事」は、経済成長の芽どころか推進力だったわけ。そこに円を行き渡らせた昭和時代に、世界を席巻できたのです。
その中小企業の経営が最近は傾いてるけど
政府は緊縮財政と消費税増税で通貨削減し、買い物するお金を庶民に渡さない方針です。企業が売れないように締め上げ、故意にデフレ不況を維持して26年。
大阪のシャープや長崎のハウステンボスも倒れた
拷問を受けた者が傷だらけなのは当たり前です。傷だらけである事実を理由に、存在価値がないと言い出す。言い出す者たちは拷問した側だから、タチが悪い。
後の地震やコロナで企業はさらに傷ついた
新型コロナ肺炎の「自粛の強要」で外出制限したのは、ひとまずよい政策でした。
その外出制限で起きた業績悪化を指して「ゾンビ企業はつぶそう」と裏切りを言い出す。「日本人て性格悪すぎ」と素直に感じる人も多いことでしょう。
ゾンビ企業つぶしは資産強奪作戦だったのね
企業を売買する業界があり、世界中の企業価値を調べています。
コロナ禍で売れずに業績悪化した企業は、コロナが終われば復活する公算が高い。それを見越した者たちがコロナ禍のうちに企業を倒し、時価総額を下げて安く買い叩きます。
技術や特許の価値がコロナで落ちた時を狙い、利権を奪います。コロナ禍が去って経済が持ち直せば、高く売り抜ける商戦なのです。
企業が投機商材にされる時代か
一般には、M&A会社や金融ファンドが仕掛けます。
緊縮財政には「お金への誤解」に「レントシーキング」も加わっているのです。
ウイルスに便乗したショック・ドクトリンね
さらに失業者を増やせば、人材派遣企業は労働者をより安く買い叩けます。庶民を貧困に落としてやるだけで、おもしろいように儲けが伸びる業種があるのです。
デフレ不況が長引くにつれて、経済低落と貧困化が儲けになる立場が増えます。国を破壊した方が収入が上がる人たちは、日本を昭和の好景気に戻させまいと必死です。
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