マスクやトイレットペーパーの値上がりを防ぐには生産力向上

トイレットペーパー買いだめ

トイレットペーパーの値上がりは、1970年代前半以来

新型コロナウイルス騒動で、3Dマスクやトイレットペーパーが買い占められて、品薄になった現象です。長期の品切れを防ぐには、日本は今後どうすればよいのでしょう。

買いだめは愚かな行動だけど?

買いだめが連鎖する理由は、買いだめする者がいるからです。

発端は中国製パルプが輸出制限されるというデマで、実際には日本のトイレットペーパーは国産パルプ率が98パーセントだそうです。誇れる数字です。

1990年代末の環境マネージメントシステム(ISO14001)ブーム以降は、シュレッダーで繊維が切れたOAペーパーも、リサイクルで使っているからです。

紙はふんだんにある?

製品が十分あっても、買いだめをやめさせる説得にはなりません。他人が全部買うなら、張り合って買わないと自分が手にできないからです。

すでにドイツやアメリカでも品不足は起き、日本に特有でもありません。踊る者が馬鹿だとかでなく、人間の本能のはたらきです(アメリカは行政からの指示もあり)。

値上がりはインフレ現象か

ダブルタイプで12ロール500円のトイレットペーパーが600円に上がれば、一種のインフレが生じています。

インフレは需給のアンバランスで起きる現象で、商品がレア化して値上がりしています。お金の値打ちが落ちた状態とも言い換えられます。

本来は全商品で起きるのがインフレですが、当面はトイレットペーパーを買う時だけ円の価値が低いわけです。

値上がりを正常に戻すには?

お客がトイレットペーパーを買っても買っても、店がすぐ補充すれば値は上がりません。補充できず棚が長く空いていると、やがて末端価格が上がってしまいます。

お金の価値を保つには、商品がふんだんにあることが大事です。

生産力というものは、国家経済の強弱を決める最大要因です。

そして需給の秩序がある国は、より多額の貨幣を国内で発行できます。つまりインフレになりにくい国です。日本は超インフレになりにくい世界有数の国です。

理由は全方位の製造に歴史があるのと、手が器用だからでしょう。

では、日本と逆の国はどこなのか。

超インフレになりやすいのは、製品が補充されにくい国

アフリカ大陸のジンバブエは、金属と鉱物が豊富に出るから、経済が強そうに思えます。

しかし農作物と工業製品を量産できず、店に補充されにくい。すると、お金の価値が下がるインフレが起きやすい。

自動車を生める日本はお金を多く印刷でき、生めないジンバブエは少なくしか印刷できません。お金を多めに印刷しても価値を保てない国が、途上国の定義といえます。

それでジンバブエは超インフレになった?

宇宙開発で、政府がお金を発行して民間に外注する時。トイレットペーパーが不足しやすい国かどうかが、作れるロケットのサイズを決める理屈なのですよ。

商品がすぐに不足する国では、お金を自由に発行できなくなり、大きい事業で大金を造幣して使う計画が制限されます。

お金が多い国ではなく、商品が少ない国に、過剰なインフレは起きるのです。

お金を発行できる総額の目安は、金額の大きさではなく、生産力の大きさです。

国によってお金を刷れる限界が全然違う?

実はそこが日本では理解されません。日本経済への警告にひんぱんに出てくるのが、ハイパーインフレでおしまいになるという説です。

「日本は円を発行するとジンバブエのようにインフレで倒れる」。

これは、小惑星探査機を作れない国とくらべてマヌケなだけ。

超インフレになりにくいのは、アメリカ、中国、日本です。最もインフレになりにくいのは日本でしょう。その根拠は製造力だけでなく、企業の対応が素早い点もあります。

商品を品切れにしないで、生産力を維持する国をつくる

奇妙な現象が日本で目立ちます。デフレなのに超インフレを恐れる人が多いのです。

凍傷の足を湯で温める案が出ると、すぐにこう叫ぶ者が現れますよね。

「全身大やけどや、黒焦げ死体になったらどうするつもりか?」。

「周囲の民家も皆燃えてしまい、その賠償金を払えるわけなかろう」。

そうして凍傷、つまりデフレ不況にとどめさせ、無理心中や少女売春の増加もやむなしとしてきたのが、平成と令和に繰り広げられた奇妙な論争でした。

デフレが続くとインフレになりやすくなる?

ところが、デフレが長引くと、本当に超インフレになる理屈があるのです。

デフレだと企業倒産が増えるから、生産力が落ちます。生産力がないせいで超インフレになったジンバブエに、日本がだんだん近づく理屈なのです。

「デフレにも利点はある」と吹聴する者はいますが、利点は全くありません。

デフレはお金の価値が上がって嬉しいと聞くし

国内の商品価格が落ち、購買力が国内で上がるだけで、命の値段は落ちます。

デフレだと金利が下がり、大金を預けても利子がつきません。大金持ちにおもしろくないのがデフレなのです。

アメリカがデフレを極度に嫌うのは、国難に陥る仕組みをわかっているからでしょう。

国内の生産力はどうやれば維持できる?

普段から過剰にお金を発行し、国民にばらまくのが正攻法です。国民に常に多めに物を買わせて、製造量を多めに保ちます。欧米先進国はそれで、金持ちで物持ちです。

そして近年は中国がアジアから抜き出て、欧米方式に目覚めたのです。

逆走する日本と、入れ替わるようにして。

店に送り届けるスピードは?

物流で、トラックと運転士がいるかの問題です。日本の新たな弱点ですね。工場の倉庫に紙はあるのに、製品を運ぶ能力が落ちていて、各地の店の棚は空っぽですよね。

なぜ落ちたかは、デフレ不況のせいで運送がブラック業界になったからです。

運送は平成の貧困業務の代表だから

国の無駄をなくせばなくすほど貧困化が進み、売れる量が減るから生産態勢は縮小され、いざという時に物が不足します。

先進国は、ある程度お金じゃぶじゃぶにしておくのが正しい道です。

マスクやトイレットペーパーを転売する者の、モラルを叩いても意味なし。全てはデフレ不況で弱り続けている日本の途上国化、という線で話がつながっています。

トイレットペーパーの買い占めで値上がりするのは47年ぶりです。先進国と途上国の違いは生産力と運送力であり、長いデフレで日本は落ちました。
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