ヤマハ音楽教室とジャスラックの戦い
ジャスラック(JASRAC)といえば、日本最大の音楽著作権管理団体です。
音楽教室との裁判で今日2020年2月28日に判決があり、音楽教室が敗れ、ジャスラックが勝ちました。
この裁判は、ヤマハなど全国チェーンの音楽教室が、指導の教則本や題材として使っている曲の著作権料を、課金されている苦悩です。長く払ってきませんでした。
真の争点はどのあたり?
音楽教室側の言い分は、「音楽教室は有料であっても教育の文化育成なのだから、そこは著作権料の支払いが免除されてしかるべき」。
ジャスラックの言い分は「音楽教室は教育であっても有料の経済活動なのだから、そこは著作権料の支払いが発生してしかるべき」。
「これは文化だ」と音楽教室。
「それは商売だ」とジャスラック。
どっちも正論に聞こえるが?
ネットではジャスラックに対して、前々からすごいバッシングが続いています。理由は、がめつくて容赦なくて、強引で血も涙もないというものです。
どっかで聞いたフレーズですが、本当なのでしょうか。
ジャスラックは古くから著作権を守ろうとしてきた
ジャスラックは1970年代から少しずつ、著作権料を支払わせる対象を広げてきました。ダンスホール、カラオケバー、ディスコ、エアロビクススタジオ、学生演劇。
新品の生カセットテープ一本ごとに、音楽著作権料を上乗せする制度もできました。
確かにせこい
アマチュアバンド体験者は知っているように、既存の曲をカバー演奏すると、手頃な安いチケット料金で、ささやかなコンサートを開くことはできませんでした。
お客のリスナーに課金すると、ガバッとジャスラックに持って行かれるからです。著作権料を多額払ってチケットを高くするか、無料コンサートにするか決断を迫られました。
素人バンドの発表会も、高い入場料か無料か、両極端を余儀なくされました。
天下りとかもあったし
ジャスラックは「一般社団法人日本音楽著作権協会」という非営利団体で、幹部の多くは作詞作曲家の重鎮たちです。極めて正常な団体です。
特異なのは、日本で一党独裁的になっている点です。自由競争といえるか微妙。昔、新興会社のホンダ技研を業界が排除した時のような政治的意図も言われ、著作権料は高額だと言われます。
一例はジャズ喫茶で、レコード盤をかけるプレイと、生演奏バンドの音楽使用料の支払いが、店の収入に対して大きすぎたのです。
コーヒーや酒にかけるコスト以外に、レコードやCDソフトをそろえられなくなります。JBLとかマークレヴィンソンなんかの高級オーディオ装置を買ったり、バンドを呼んだりできないほど苦しくなって、マスターらはタダ働き同然になった問題でした。
どこかで聞いたような話
『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の漫画で、作者のやまどめたつひこ、こと秋本治さんは、両津警部が活躍する場面に、音楽の歌詞を立て続けに3曲活字で書いたことがありました。
すると1ページで、1曲5万円、3曲で15万円の著作権料を払うというのです。
好景気の時代だから、ギャグにできたのですが。
海外では音楽の著作権料はどうなっているの
アメリカには、大きい団体ASCAPというのがあり厳しいけれど、音楽著作権の使用料はもっと安いそうです。日本はアメリカの3.5倍の使用料という数字は見つけました。
アメリカでは少し払えば、アマチュアでもお金をとって演奏できるそうです。作詞作曲者とカバー演奏するプレイヤーともに、協業的に儲かる仕組みだそうです。録音でまた別に払うということもなかったような。
今も音楽ユニオンでプロを守る態勢も、規制緩和などしていないから、コンテンツ産業をうまく調整できているのでしょう。
スケールメリットか?
ジャスラック自身も、420万曲も登録している各音楽家たちに、きちんと支払いする改革もやりたいわけで、使用料を無料奉仕はできません。
ところが。低料金にはできないのが日本の事情です。著作権料をとる対象を増やしても、比例的にはジャスラックの収入は上がっていないのでしょう。
音楽教室にすれば、払う金額が高くてびっくりで、「どこにそんなお金があるのか、日本のこの不景気で」という衝撃です。そのあぜんとした思いを動力源に、どうみても勝ち目のない不利な裁判をやっているわけです。
払うかどうかを争えば、「払いなさい」の判決は予想がつきます。
日本の不景気が背景?
ジャスラックと音楽教室の関係は、楽天とテナント店の関係や、コンビニ本部とフランチャイズ店長の関係と同じですね。
広い意味で上が下から搾取する、ブラック現象が起きているのです。
今の日本では、広く薄くとる理想に届かず、広く厚くとるはめなります。その「広く」の部分で、リスナーや生徒が減って「狭く」にとどまるからです。
消費者が消費を自粛しているから。
要はお客にお金がない?
音楽教室とジャスラックなど著作権管理団体のどっちが正しいか以前に、国民の貧困化が進んでいて、日本経済は壊れています。音楽を使ったあがりが少なくなりすぎて、小さいパイを奪い合う光景です。上と下が内戦の状態なのです。
共に繁栄しようではないかという仲間同士が、共食いしているのです。
つまりあれが原因?
あの事件で、リスナーが音楽に払うお金を節約して、CDなど音楽ソフトも売れなくなったせいです。無駄な出費を減らそうとしたあの運命の分かれ目。
事件とは、1997年4月1日の緊縮財政と消費税増税です。国民が購入できる物がぐんぐん減り続けています。アメリカは正反対に積極財政と減税をやっているから、日本と正反対に音楽も盛況です。
簡単すぎる話です。
アメリカでは誰が打ち出の小づちを?
米ドルの貨幣プリンターは、実は完全民営化しています。米ドルの通貨発行権の担当は、連邦準備銀行(FRB)です。国民を富ませる自国ファーストでは政官財が一致し、日本のようには逆走せず順走しています。
プロがめしを食えないなら、まずはドルを発行して国民に渡せばしまいと知っています。プロから物やサービスを買うお金さえ国民に与えておけば、うまいミュージシャンも市場が育てると信じているからですね。
・ 結果は、アート大好きで、あれこれ見に行こうぜ、という国民性
・ 結果は、アートを敬遠して、あまり見たくないね、という国民性
違いは政府の支出?
アメリカ財政は、財源の共食いが前提にありません。お金は国民がかせぐものではなく、中央銀行が国民に与えるものだと知っているのです。
お金を与える口実として、各人に経済活動をやらせているだけの話です。
日本を振り返ると暗すぎ
経済衰退に納得し甘んじるのが日本人です。アメリカ人は経済の伸びが減れば修正して、伸び率を上げるために、お金を国民にまきます。
デフレ不況に甘んじず、デフレなのにインフレだと嘘をついたりしないのがアメリカ。
日本ではヤマハ音楽教室が言う「音楽文化のすそ野の育成」は犠牲を余儀なくされ、これは「日本の児童の7人に1人が貧困」とユニセフが指摘した、音楽版といえます。
ジャスラックが音楽ファンの敵に回る。それほど日本は貧困化しています。
音楽やりたきゃアメリカへどうぞ、という亡命の圧力かもね。