若者の何とか離れブームは、単に財布の中身の問題
「若者の車離れ」をよく聞きます。
これは「少子化の原因は子どもをつくらない若者の奇妙な考え」と同じで、日本が傾いた理由をずらしています。
若者が車を買わない理由の全ては、お金がないことです。
車を買うお金がないのに車を買う人は、かなり珍しいタイプです。
しかも、日本全体の貧困化が進んでいるので、若者に限らないはずです。
皆さんの近所でも、持ち家の戸建住宅にガレージがあるお宅が、3ナンバーの中型セダンから軽自動車に買い替えていたりしませんか。
あるある戸建てのKカー
町内を歩くと、軽自動車がめっきり増えていますよね。アメリカ製ダッジのピックアップトラックから、軽ワゴン車に乗り換えていたりもします。
ゴゴゴゴー、ドロドロドロドロ、ガベガベガベガベと5700ccの排気音が、軽い660ccにグレードダウンしていました。だいぶ前から国民に「上級グレード車離れ」が起きて、最低限の車に替える人が続出しています。若者に限らず。
中古の軽自動車を買う余裕はあった若い会社員は、それより安い車はないから原付バイクや自転車に落としています。
そのグレードダウンを指して、
「物余り時代の美意識」。
「シンプルで飾らないライフスタイル」。
「排気ガスの環境負荷を気づかう優しさ」。
「自分の足でこぐ健康志向」。
なんてほめるのは、何だかなーと思いませんか。
若者は本当は車が買いたい?
若者は車を所持して乗り回したいわけです。いつでもどこへでも、雨の深夜も行ける便利さは絶大です。遠乗りして世界を広げたいし、仲間とのドライブや、一人旅も。
車でしか行けない場所って、ありますよね。山頂の展望台とか、郡部の海岸の砂浜とか。郷土に何があるのか見聞したいし、秘境へも行きたい。人生の早いうちに車が欲しくなります。老後ではだめ。
車以外は効率が悪く、レンタカーは回がかさむとめんどう。
車の所持を閉ざす要因は、購入費と維持費の不足に決まっています。わかりきったことを歪めて、向き合わない日本が不気味。
若者も自分に向き合えなくない?
若者が言う「車があっても、あまり乗らないし」も同じかも。買わない理由を後づけしていますね。イソップのぶどうです。
緊縮財政と消費税増税により、日本経済は縮小しました。所得が減り続けて、安い商品へ流れます。車から自転車や徒歩に変えたのは、デフレ不況の直撃なのです。
若者が車以外からも、離れまくっている問題
若者の何とか離れは車以外にも言われます。「結婚離れ」「デート離れ」「飲み会離れ」「読書離れ」「レジャー離れ」。
さらに「スポーツ離れ」「映画離れ」「パソコン離れ」「漫画雑誌離れ」「ファッション離れ」「コレクション離れ」「エレキギター離れ」「趣味離れ」。
全て、お金がないからでしょう。ない袖は振れない。なのに、ひとつひとつの離れ現象をテーマに、お金以外の理由を論じる番組があります。いやな風潮です。
こじつけ説明はこんな感じ。
「生まれた時から物に囲まれて育った飽食の時代にこそ、自分探しを始めた若者」。
「生きるために不要な物を捨てて、高い次元の精神性へと昇華した新たな哲学」。
その解釈って若者いじめ?
一番多いこじつけ説明は、スマホがあるから何もかも満ち足りた時代だ説です。
スマホで、ウナギせいろ蒸しの味はわかりませんし。現実世界に自分が加われない孤立感は高まります。だからか若者の自殺率は、世界とくらべて高すぎるし。
しかも若者に限らないとすれば
国民の何とか離れでよく言われるものといえば。
「ゴルフ離れ」「スキー離れ」「テニス離れ」「アスレチック運動離れ」「本物ビール離れ」「ウィスキー離れ」「一眼レフカメラ離れ」「豪華客船離れ」「デパート離れ」「自然食品離れ」。
一度でも言われた説を誰かが拾って回ると、数百種類もあったそうです。これらは全て、値がかさむ商品の不買です。
典型が「高級ブランド離れ」。モロですよね。代わりに売れるのは、ユニクロ服や水筒やモヤシや、レトルトカレーやビール風飲料など。要は節約アイテム。
昔も今のように貧乏だったの?
今とは正反対に、車や飲み会や運動や旅行に接近した時代がありました。何でも体験して熟達して、一家言を語る人が増えたのはバブル時代でした。
バブル時代には、国民が使うお金がありました。
厳密には、使ってもすぐ補充されたから。どしどし出費して体験して自分を磨くのが得な時代でした。一人一人は金持ちでもなかったのに、お金がぐるぐる回ったのです。
その頃の人口は、今より少なかったしー。
バブル時代にくらべて、氷河期以降の人たちは体験が乏しいのです。
お金がある人たちの夢は「宇宙へ行きたい」。お金で行けると知っているからです。
お金がない人は言い出しません。その夢が、若者にとっては宇宙ではなく車に降りてきました。日本の1950年代に戻った感じ。
若者の未来の可能性を閉ざす、日本の長い長い貧困化
貧困化した若者は、気持ちが萎縮します。スケールが小さく、発想がみみっちい。画期的な着眼や発明の意識もしなびて、世知辛いのです。
貧困社会は若者の育成ができず、可能性を閉ざします。
あれも知らない、これもやったことがない、実物を知らない、行ったこともないと、視野の狭さで人材難が起きます。一例がパソコンを使ったことのない若者の増加です。中高年の手ほどきを受ける若者という、意外すぎる現象です。
下の世代の方が新技術に詳しいのが、従来の先輩後輩の関係だったのに。
「若い頃に色々体験し極めました」の人が、未来のイノベーションを切り開くはず。
日本の強みは中堅や末端の人も、途上国を引き離す知識と教養があったからなのに。
車を買う以前の問題も
若者の中には、お金が惜しくて自動車免許証を取らない人が増えています。未来の自動車開発に縁がなかったり、国産車の開発力がしぼみます。
若者に十分すぎるお金を与え、あれもこれもやらせないと、先進国の地位を保てません。
学生がアルバイトするのはよいのですが、売春や詐欺の受け子を始めたりに追い込まないよう、賃金を上げないといけませんね。
誰が若者にお金を与えるべき?
お金を増やす話であり、増やす権限は政府だけが持ちます。まず政府がGDP倍増論などを打ち出して、政府が円を発行し、政府が民間から物を買います。
政府が市場にお金を投げ込むのが、経済成長の正攻法です。
イギリスが発明した現代の財財政手法です。
知らない人は「そんな手があるのか」「突飛だ」「怖い」と驚きます。驚く人があまりに多いと、今の日本のようになるわけです。