マツコ・デラックス「もうみんな限界」の意味はこういうことだった

ドラクロワ絵画フランス革命

デフレ不況の貧困は、日本人を鬼に変えつつある

芸能タレントのマツコ・デラックスさんが2017年に言ったとする「もうみんな限界」。その意味は何でしょうか。

謎解きするまでもなく、今の社会を覆っている閉塞感の正体は、デフレ不況です。何でだろと首をかしげる人は、まさかいないでしょう。

それ以外のあらゆる悪しき社会風潮も現象も、デフレ不況からの派生や反映です。

ママさんの間にマウンティングが増えているのと、各地で洪水が増えているのは、同一の原因なのです。デフレ不況です。

金回りが悪いと、各種の工事が省かれ事故や災害が増えるのは当然だし、何かと不機嫌になるのが人間です。ふところが寒いと、性格のよい人も悪くなっていきます。そのことを遠回しに伝える言葉だと受け取れました。

ドーンと大きくデフレ不況が存在して、そこから多様な問題が広がっているのです。

デフレだと何が起きるの?

典型例がブラック企業です。バブル時代には全く聞いたこともない話でしたが、平成時代に流行語として定着済みです。ブラックとオレオレは平成の合言葉です。

ブラック企業とは、パワーハラスメントが常習的に続く会社のことです。意地悪な上司が立場の弱い部下を暴力的言動で圧迫する、犯罪行為です。

先に起きているのは加害者のメンタル崩壊であり、心理学のカテゴリーです。人格障害の一種にみえますが、どちらかといえば一過性のパニック症候群でしょう。

似た現象は?

戦場で起きる、兵士の残虐行動と似ています。安定と保証が失われ、生命維持が危機的な境遇にあると、人は自動的に狂気に向かいます。ほ乳類の宿命です。

たとえば出産した直後の母犬を突然驚かせると、愛する子犬をかみ殺す行動が起きます。理屈に合わない行動に出る哺乳類の反射です。人にも当てはまるかも知れません。

意地悪上司の気持ちがわからん

ブラック化した上司の気持ちになるのは簡単です。

芸能タレントの失敗を激しく叩く時の正義感と、だいたいイコールでしょう。芸人を叩く時の気持ちが、加害上司の気持ちとほぼ同じ。相手が失敗していないのに、叩く理由を探す心理にさえなるのです。

所得減で金回りが悪いと、不機嫌とギスギスが伝染します。冷淡で薄情な人柄へと変化します。「もうみんな限界」は、その気分の充満と関係があるでしょう。

苦笑いで済むような場面で、マジギレする者が変に増えた時代です。

みんな限界とは、デフレで国民の共食いが目に余る苦悩

同じ組織内の上と下が険悪な関係になっていくのは、動物学的に言えば共食いです。

共食いはエサ不足で起きます。人間にとってのエサとはあれですね。

お金か

相手を食わないと、自分が食われる状況です。具体的には経済縮小が背景で、少ないお金を奪い合う窮乏です。金回りは人格形成を決める面があります。

戦後の日本でやはり起きました。人間の醜い面が、いくらでもあらわになるのです。

誰でも雰囲気に染まるから

平成時代の中旬と下旬は、漢字一字で言えば「縮」でした。「伸」ではなくて。あらゆる物ごとのスケールが小さくなるのだから、絶望感や閉塞感が広がって当然です。

「もうみんな限界」とは、身近な人のメンタルが破壊される光景が目について、自分もおかしくなりそうな予感でしょう。その原因はウクライナ問題や二酸化炭素排出量制限などではありません。自分たちが使えるお金の減少です。

日本人に広まるギスギスの原因は、国際問題ではなく台所問題です。サイフ問題です。

ことわざ「金持ち喧嘩せず」の逆が起きます。

でもタレントは金持ちじゃないの?

テレビ番組づくりでも「金ならあるから使え使え」は聞かなくなり、「とにかく削減につとめてくれ」では、現場の雰囲気も暗いわけです。和気あいあいとはなりません。

ネット情報を拾ってきて、スタジオで芸能人がトークするだけとか。スタジオの飾りつけも安っぽかったり、使い回しが増えています。

お金がないと何もできない時代なのに、お金を増やさず逆に減らす国策の逆走によって、人心は荒廃し心の闇が肥大化してきました。優生思想へ傾いた民意もそう。

日本人の民度低下?

それが比較的早めに表れたのは、小学校の給食費を払わないモンスターペアレントの台頭でした。児童がいる家庭の貧困化というやつです。

本当はその金額は家にあります。でも実質賃金が下がると、出費への底知れぬ恐怖感が起きます。悲観的で感受性が強い人ほど、持ち金を払いたくない人情がふくらみます。

「日本人の民度はこんなに低かったかしら?」は間違った設問です。あったはずのお金が減ると人格が壊れ、反社会的に変わるのが人間です。

嫌なやつだらけの時代みたいな

バブル時代なら善人で通せた人々が、悪人になったのが平成デフレ不況です。

自分の都合で他人を踏みつぶす割り切りが、正義となった平成の人生観です。

不機嫌や凶暴が充満すると、途上国のように戸外が危険になり、女性と子どもが暴行され殺害されやすい社会に変わるでしょう。

「もうみんな限界」は、経済縮小させた国策ですさみきった日本国民を示します。

1789年は残虐な大衆行動で、フランス革命となった

貧困化した庶民が怒り出し、為政者を退治した歴史的な事件が、フランス革命でした。

歴史の教科書より、漫画『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットを連想するかも知れません。今のフランスは民主主義ですが、上級国民を処刑した市民の殺気がすごい。フランスの「もうみんな限界」は、ギロチンの時間帯となりました(400万人死亡)。

フランス革命の原因はやはり異常な重税と、火山噴火による食料不足でした。

日本でも異常な重税の次に、あと何かがあれば、そっちへ向かうかも知れず。上級国民が下級市民を棄民法で殺し、下級が上級を世直しで殺すテロ社会です。

「質量保存の法則」を発見し、近代科学の父と言われるラボアジエは、徴税請負人を兼務した経歴を理由に、フランス革命の恐怖政治でギロチンで処刑された一人。
フランス民主主義の原点ね

ちなみに、マリー・アントワネットの世間知らずな言葉とされた「パンがなければ、ケーキを食べればよいのに」は、別人が記述した言葉だそうです。解釈も間違いです。当時のパンは新開発された高級品で、ケーキ類は従来の安物だったとか。

「イワシがなければ、ウナギを食べればよい」などトンチンカンではなく、逆の真っ当な記述でした。今のショートケーキなどと違う、ケーキと呼ぶバッタ物だったのでしょう。

フランスで民衆が立ち上がらなかったらどうなっていたでしょう。人口が無駄に減るわけで、日本のデフレのコースどりもそれです。

ルイ16世の時代と平成日本は同じなの?

日本の異常な重税は「政府が円を必要なだけ刷れば国が破綻する」という、フェイク情報を大勢が真に受けた信仰で起きています。

いずれにしても、日本は緊縮財政のせいで戦争へ向かっています。

みんな限界だ、いっぱいいっぱいだ、の実感は好景気時代には聞かない話でした。緊縮財政と消費税増税で、民間の貨幣を故意に減らした結果です。
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