電通が持続化給付金の手数料を中抜きか←消費税増税の被害者だった

電通

電通は世界最大の広告代理店と、優秀なコマーシャル

みんなで電通を叩きますが、「ちょっと待てい」というお話です。

電通は日本の誇らしい会社でした。大日本帝国陸軍と関係があり、略称ふうの企業名も、電気通信分野の顔役みたいな公的な響きがありますよね。

役所っぽい名前

バブル時代の日本映画の代表作に、『私をスキーに連れてって』『彼女が水着にきがえたら』『波の数だけ抱きしめて』の三部作がありました。

制作は馬場康夫率いるホイチョイ・プロダクションです。映画の前から、漫画を大ヒットさせていました。

広告代理店の社員が次々と失敗をやらかす、ギャグマンガでした。広告業界のおもしろい慣習や、内部事情を描いた内容で(『気まぐれコンセプト』)。

広告産業は人気だし社員もモテたし

それとは別に、広告代理店の活躍を示す雑誌が古くからありました。テレビコマーシャルを特集した『CMナウ』という雑誌です。

テレビコマーシャルのメイキングや裏話の、興味深い雑誌でした。驚いたことに、日本の主要なCMは二社が大半を制作していました。電通と博報堂です。

電通論の単行本はバブル以前からあり、世界最大の広告代理店とCMフィルムの質の高さで、日本の有力企業として輝いたのが当時でした。

先進国ではコカ・コーラとペプシ・コーラを、同一広告代理店では担当禁止が多いのに、日本には規制がない問題がありました。寡占化は昔からでした。

CMの世界コンテストもあったし

日本のテレビCMは、商品の優劣比較より、間接的にほのめかす暗喩、メタファーが多用されます。遠回しに好感度を印象操作し、ライバル企業を叩かず叙情的で奥ゆかしい。

細かい部分にシャレを加え、コマーシャル自体をアート的な鑑賞対象につくり込み、繰り返し見たいエンタメに仕上げていました。

電通はネット時代には、日本を壊す諸悪の根源と悪評

電通が非常に悪く言われたのは、ネットでした。

テレビ業界を仕切るからです。テレビは一時、ディスカウントジャパン運動に力を入れたので、放送業界は日本の敵だと言われました。

不吉な流れに「国会議員選挙の候補者支援」を広告代理店が受け持つ時代性もあります。

アントニオ猪木とか?

芸能タレントやスポーツアスリートが参議員に立候補する作業を丸ごと請け負うのです。宣伝ポスターに政策公約に、キャッチコピーやスローガンも。

国への思いや、決意を誓う作文、演説内容も監修します。

服装や髪型やメイクや、たぶん姿勢や歩き方も指導し、応援隊やサクラも用意しイメージ戦略で当選させる、選挙戦パッケージ商品です。放送業界は印象操作でかつぐ。

選挙の請負は海外で発達したようで

企業の不祥事の「おわび会見」も請け負います。カメラに向かって言うセリフ、いつ誰が出てどう泣くかなど、企業のダメージを減らす作戦です。

一説では、受験生の面接の指導も商品化しているとか。

どれも広告宣伝だからわかりやすい

販売促進のイメージづくりは印象操作であり、人をだますセオリーと同じで、情報化時代に伸びる業種だとは、1990年代によく言われました。

予想どおり政界と親しくなり、普段の取り引き関係へ進むわけです。政権の利害関係者となり、政商の立場へ発展することでしょう。

週刊誌ネタは、議員や官僚の子息がコネで電通に入社した記事でした。

女子社員がパワハラ自殺した問題は?

電通の社員が亡くなった事件で、電通に余裕がないとわかります。勝ち組の電通とて我が世の春ではなく、平成日本の貧困化でブラック化していました。

電通自身は、貧困国では広告制作の収入も落ちて、大胆なコマーシャルも打てなくなるから、別に庶民の敵ではないのです。本当は庶民の味方なはずで。

しかし電通マンとて「税金は財源でない」「実は捨てるお金さ」とは知らず、放送電波に近い業種の強みで上級国民化して、貧困の促進に加担した面があったでしょう。

本業以外に手を広げた?

制作以外に、政策の便利屋になる条件もそろっています。

2020東京オリンピックで広告代理店の登用は適任でしょうが、「すき間の雑用もオールインワンで包括契約して全部やってくれ」という話なのでしょう。

こうしたすき間の雑用は、昔なら土木系データ会社や大型コンピュータープログラミングや、データベースのIT関連業がやったのではないでしょうか。

それらの民間企業を緊縮財政と消費税増税で壊した平成時代に、万能の便利屋さんとして電通ほか何社かへ、官業が集中したのでしょう。

国民は「何でコマーシャルのメーカーが国を代行するの?」と感じたでしょう。

これぞ新自由主義経済というわけ?

「民営化で小さな政府にすべき」を説く者は、縮小した政府の手が回らない仕事を、代行で請け負うのが手です。新自由主義らしい我田引水の政商です。

代行窓口で下請けからピンハネとか。仲介料を中間搾取する典型が、人材派遣業です。

派遣社員を使う企業は、ピンハネ分が増える損が生じるから、派遣を備品で会計処理する優遇措置を消費税制にもぐり込ませ、庶民から搾取し上で山分けする寸法です。

電通問題を整理するには、財源論から脱出しよう

2兆円以上の持続化給付金を「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」という、電通の社員も出向したトンネル会社を受け皿にして、電通へ再委託したトリックの疑惑が今の騒動です(追加情報:他にパソナとトランスコスモス)。

769億円で受けて、749億円で再委託するというもの。差額は20億円ほど。

けっこう作業に経費がかかるんだ

問題は金額ではなく、受け皿企業の隠しごとの病理です。

たとえば、公共事業の建設土木では再委託は禁止されます。

スーパーゼネコン5社がリニアモーターカーを受注しても、丸投げの再委託は禁止です。サブコンや地元工務店は、助っ人応援か部分業務まで。コアは一部でも再委託がだめ。

しかし持続化給付金の事務は再委託できる奇妙さで、総理は問題なしと言います。特命の随意契約を指名競争入札だと装った、官製談合の疑惑です。

国民はどこに注目すべきか?

「税金が奪われた」の解釈間違いが、ボタンの掛け違いです。

国民が最も怒る税金問題は、実は存在しません。

そもそも国税の徴収は、貨幣価値の安定化と貧富の格差縮小が目的であり、理論的に財源ではありません。国の財源は、普段から国債発行です。

持続化給付金の2兆円以上も、新規国債発行の真水分であり、作業費769億円も同じ国債発行です(緊急時は国庫短期証券)。永久に誰も負担しない、自国通貨の追加発行です。

自国通貨に限り、発行は政府の借入金でなく、自己資金なのです。

税金を電通は奪っていない?

登場人物の誰も、国民が払った税金を盗み取りしていません。

今回はそうだとかではなく、原理的に国税は支払いに使うお金ではないからです。

税金は厳密にインフレ抑止が目的の貨幣廃棄、要するにゴミです。

税金は絶対に盗まれない?

実は税金同士のシェアで盗まれます。日本の消費税は常に、法人税減税とセットでした。三度の消費税増税は、法人税減税を穴埋めするダミー政策です。

一般に法人税減税は、内部留保を増やす意識を押すから、社員給与カットへ向かいます。でも怒る人はまれですよね。

「福祉目的の消費税」の虚偽を国民は信じ、二種の税金が共食いするカラクリを知りません。まさにオレオレ詐欺の時代で、きれいにだまされ気づかない状態です。

コロナ給付金で国民は一円も失ってない?

世界は1973年から信用貨幣管理通貨制度に変えたので、当然です。

政府財政出動はどれかの企業が受け皿となり、追加の通貨発行を国民側に引き込みます。互いに人間だから、政府が頼みやすい行きつけ企業もできます。

行きつけの縁故が固定しないよう、広範にばらまくのがベターです。警察のパトカー調達がその考え方です。全メーカーの色々な車種で仕立て、片寄りを小さくしています。

常連が固定するアンフェアが問題であり、ばらまきは広く薄くが理想です。

諸悪の根源は電通じゃない?

諸悪の根源は、プライマリーバランス黒字化目標であり、緊縮財政と消費税です。

これらは電通が強いた奇行でなく。わき役で日本破壊の逆走政策に振り回されました。

サンヨーやシャープなど大手企業が、デフレの収益悪化で傾いた問題と同じ。世界最大の広告代理店が外資に買われたら、テレビ番組はさらに偏向するでしょう。

記事→ 財政健全化と呼ぶプライマリーバランス黒字化目標が諸悪の根源

コロナ対策の給付金が何種類もあり、どれも誰か人が作業します。その選定が不透明という課題はあっても、誰かが税金を盗んだ問題ではありません。
Photo: by Ariane Hackbart on Unsplash