消費税0パーセント案=自由民主党の若手議員の提言を読み解こう

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政府の大型補正予算で、働く者たちへコロナ禍の補償

昨日2020年3月11日に、自由民主党の若手議員賛同者45 名が出した、消費税を0パーセントにする提言を読み解きましょう。新型コロナウイルス対策の、5項目からなります。

外部→ 「令和の恐慌」回避のための30兆円規模の補正予算編成に関する提言(PDF)

(1) 30 兆円規模の補正予算
30 兆円規模の補正予算を編成し、財源には躊躇なく国債を発行してそれに充てること。なお、2025 年のプライマリーバランス黒字化目標は当分の間延期すること。

これは、30兆円の政府財政出動を行う政策です。その意味は、独立国が持つ通貨発行権で発行した円のお金を、政府が支払い金で国民に渡すことです。

「躊躇なく国債を発行して」とあり、「国債の発行コストを子孫が背負う」の都市伝説を信じないグループですね。

信じる人とは違う言い方です。

国債を発行すればするほど、先進文明国になるだけの話です。なのに日本では、国債発行はドル借金と勘違いした人だらけで、後で返せないと騒ぎ、とりつく島がないのです。

「躊躇なく」とは、「国債発行すれば国が破綻する」の経済界に広まるデマへ、対抗する意味があるでしょう。

プライマリーバランス黒字化目標という日本民族ジェノサイドに対して、「延期」という言い方にとどめています。ジェノサイドの首謀者が特定しきれない警戒です。今回は深く触れずに流して、国民の生命財産を救うことが優先のようです。

(2) 被雇用者に対しては十分な休業補償
被雇用者に対しては十分な休業補償をするとともに、事業者、特に中小企業及び小規模事業者(個人事業主を含む)に対しては、失われた粗利を100%補償する施策を講ずること(特別融資だけでは不十分)。安心して休業できることは、有効な防疫対策にもなる。

「プライマリーバランス黒字化目標」をはねのけています。粗利の100%を補償するのは、これまた政府財政出動、つまり国債発行で円を追加発行する貨幣増加を意味します。既存貨幣の移動ではなくて。

もし補償金額が小さいなら、財源論の排他的な思想を引きずっています。100%と釘を刺しているのは、その思想を蹴飛ばす態度表明です。

財源論とは、国民からとった税金で国費をまかなう300年前の思想で、日本人は300年前の感覚で生きているから、この提言への反発が予想できます。

財源論は総量一定のお金を分配する間違った思想で、高齢者がより多く亡くなれば若者に回すお金が増える共食いで考えます。生活困窮者や高齢者や障がい者などを削減すればお金が助かる式の、国内のばくぜんとした空気がそれです。

「困窮者への援助は国の無駄づかいだ、援助は共産主義社会だから反対する」は、日本に急増した思想信条です。提言は、そうした選民思想にも挑戦しています。

消費税率を0パーセントにして、人々の国内消費を促す

(3) 消費税は当分の間軽減税率を0%
消費税は当分の間軽減税率を0%とし、全品目軽減税率を適用すること(消費税法の停止でも可)。なお、消費税の減税のタイミングとして6 月を目指し、各種調整を速やかに行うこと。

消費税をなくす考え方には、二つの系統があります。財源論を信じてのドクターストップ的な一時措置と、通貨発行権を知って卒業する永久措置です。

アメリカは後者で、国税の消費税がありません。彼らは消費税が財源と無関係だと知っているからです。それでドルの紙くず化が何十年も叫ばれても、ゆうゆうと刷り足し続けて国民に与えながら、ドルは今も健在で国は裕福です。

消費税は、消費を阻止するための税です。買い物客をリンチして、売買をストップさせ、貨幣を使わせないよう仕向けて貨幣価値の下落を防ぐのが消費税です。

みんなが物を買いすぎる異常好景気の時に、消費税で売買を妨害します。

好況が続いて景気が上がりすぎると、商品が売れまくって枯渇します。すると時に過剰なインフレになる。そうはさせまいと、消費ブームを急冷するのが消費税の役目です。

日本人は消費税を、福祉にあてる備えだと全く勘違いしています。また国税は国家予算をまかなう準備金だと、根本から勘違いしています。

税金は財源ではないのです。

提言は、今はそこに触れずに話を進めています。

(4) 従来から存在するあらゆる制度も活用
従来から存在するあらゆる制度も活用し、資金繰り支援等企業の廃業防止、国民の不安を払拭するために全力で取り組むこと。

これは従来ある融資制度や優遇措置のうち、既存制度も改めて紹介するなどし、民間レベルのマネー・クリエイションをプッシュする意味です。

日本の今のデフレスパイラルは、民間レベルの自由経済活動と市場原理では、絶対に脱出できません。

お金が入らないから、出せないから、入らないから、出せないから、入らないから、出せないから、入らないから、出せない・・・が、自由市場でサイクルするからです。

それを断ち切るのが、各国でただ一人打ち出の小づちを持つ政府です。政府が財政出動と減税を行えば、民間にお金が戻ってきます。サイクルを断ち切るのです。

戻りかけた景気を背景に、社長さんが銀行融資でマネー・クリエイションして、民間のお金を倍増させるのが資本主義です。それを地方銀行や信用金庫や共済など、小粒な金融も含めて経済活動を広げる提言です。続きは民間でと。

新自由主義経済グローバリズムは「傾いた国は強国に吸収されて滅ぶべき」とする思想ですが(独立国や自治区の返上)、今回はそれを選ばない方針とわかります。

国家の解散を選択する思想も、もちろんあります。望んでいる人を後で一覧にしますね。

ボロボロの平成日本を、令和で修繕するインフラ再整備

(5) 国土強靭化、教育・科学技術投資
国土強靭化、教育・科学技術投資、サプライチェーンの再構築、特定国依存型のインバウンドの見直しなど、内需主導型の経済成長を促す政策を検討すること。

日本がデフレ不況を23年続け途上国化した部分を、先進国に近づける意味です。

国土強じん化は、「コンクリートから人へ」の土建排除への反省です。洪水や道路寸断がひどい倉敷や千葉の災害と、途上国並みのノロノロ復旧を返上する意図ですね。建設土木業を削減すると、土砂やガレキの下の人体を探すのもいくらでも遅れますし。

教育・科学が無駄だとした切り捨ては、大学の文科系学部の削減案がそうでしたね。これは自然科学を伸ばすために、人文科学を廃止していく、財源論共食い思想なのです。

サプライチェーンの再構築とは、生産システムの分断を直す意味です。実例は、マスクやトイレットペーパーが店に補充されないトロさです。コストカットを進めるうちに、関連会社の連携を壊し、商品の製造運搬が途上国並みに切断されている問題です。

インバウンドは、外国から日本に来る観光客のことです。この途上国ビジネスモデルだと不安定で失業しやすいのです。インバウンド相手が本業だと、何かと不幸が増えます。

フランスのパリ市が長年苦悩してきたのに、日本は模倣しただけ。それを日本人が日本を観光する、先進国型へ戻す提言です。観光の内需拡大です。

以上、この案が与党である自由民主党から出たので、消費税5パーセントを画策していた野党は、存在感を失いました。

そもそも5パーの時に、日本は一気に傾いたわけで。

野党は、消費税という制度自体を日本からなくし、納付書類作成など本業の負担を減らすことを公約しないと、選挙に勝てなくなりました。

記事→ 国税の機能は想像と全く違う

記事→ 消費税の役目はその名のとおり

記事→プライマリーバランス黒字化目標は死の行進

外部→ イングランド銀行のマネー・クリエイション説明(PDF)

自民党の若年層議員から出てきた、消費税0パーセント化の提言。しかし同額を政府財政出動に置き換えても、正常化が難しいほど日本は貧困です。
Photo: by Louis Reed on Unsplash