新型コロナウイルスと病院の削減:無駄なコストカットで死を

手の爪

無駄が多かったので、助かることが増える身近な体験

3日前の2月1日に香港で発覚した感染者、そして昨3日の横浜港での新型肺炎騒動。

そこで「新型コロナウイルスと無駄」の関係を考えます。

飲み会の日。待ち合わせの公園で皆が待機して話していると「あっ、やばーい」の声が。どうかした拍子に、一人の手の爪がささくれてニットの服に引っかかりました。そのうちストッキングに触れて伝線しそうです。

すると嬉しい声。「あたし爪切り持ってる」。別の男の子が爪を磨いてくれました。

この爪切りのような予備が国内に多いと、国力になります。

最近話題の、新型コロナウイルスへの対応もそうです。患者が急増した中国の武漢市は、今や人の出入りが封鎖されています。コロナは風邪のウイルスで、流行性感冒のインフルエンザよりゆるい普通感冒なはずが、勢いよく流行しています。

日本は世界に何ができるか

細菌よりはるか小さいウイルスの飛散も止めるマスクを増産したり、安全に効くワクチンをつくれる研究所も期待されます。しかしその余力は平時は無駄です。

削減したくなりそう

平成の日本に吹き荒れたスローガン。

「無駄をなくせ」。

「不要不急な物は削減せよ」。

「高い国産は廃止して、海外製品を安く買えば得だ」。

結果は技術を失い、令和日本はできることが限られます。昭和の「何でもできる能力」を平成のコストカットで捨て続けたからです。

新型コロナの緊急事態で、日本が製造をやめた製品の主導権は海外へ移り、日本は国際的に出番がなく、尊敬からも外れました。国内で責任転嫁が始まりました。

無駄を削減すれば、必要な物も削減される

無駄の削減は調子に乗ります。ミニマルライフや断捨離ブームの過熱がそれ。

平成に地域の保健所と病院をどんどん削減しました。特に大阪。

新型コロナで医療崩壊すると予感する人もいます。不吉な未来。

増やすべきを増やさないとかも?

たとえば福島第1原子力発電所も、設計施工は世界有数の高品位のはずが、まさかわき役の冷却電源が海面上昇で壊れるとは、誰も思っていませんでした。

というのはウソで、津波を想定した人がいました。いつか東海地震が来るからと、堤防をやたら高くする計画はあったのです。

でも無駄を削減するブームですよ。政府支出を減らして無期延期。危機意識はあっても、お金が惜しくて見送ったわけです。

その分のお金は浮いたはずだが?

あべこべです。補助金はお金を新発行するから、工事をやめた分だけ貧困化します。

国がお金を出す時、発行するならそうか

プライマリーバランスの黒字化目標が、福島原発を放射能汚染源へ変えた犯人です。

想定外でしたと言えば済むみたいな

爪切りに相当するのは、無駄に高い堤防と、無駄に高い位置に置く冷却用電源でした。

その無駄を削減して、バシャーッ。ドカーン。はい、おしまい。

車の任意保険といっしょ。「入らなくても俺はだいじょうぶ」の賭けに負けた。

チーン。

必要な無駄と不要な無駄を分けたら、日本は復活しない

「無駄な物」と「必要な物」を見分ける話ではありません。

どんな出費も経済成長になります。国は出費のたびに、通貨発行して増やすからです。

つまり選択と集中はだめってこと?

類例に新作の美術展覧会があります。優れた作品のみ選び展示する方式だと、集まる作品がしだいに委縮します。逆に、何でも展示する方式なら、作る側はアイデアが広がり見る側は目が肥えます。発展がある。

無審査の展覧会だと、美術家と鑑賞者の双方に成果が多く残ります。あれこれ色々試し、長い目で様子見し、みんなが鍛えられるから。

まじめな国ほど伸びないのは、無駄をなくす努力のせい

災害への備えは民間には不可能です。爪切りよりはるか大規模な備えは、通貨を発行できる政府が片っ端から試すのが賢いやり方です。津波で壊れた装置も実験になった。

政府の出番をなくせば、経済が伸びると夢みる人が多い。母などいない方が、赤ちゃんが自由に伸び伸び育つ式の、部外者の間違った思い込みです。

地震、津波、台風、大雨、土砂崩れ、ドカ雪。忘れていたのが微生物の感染症でした。国の無駄の正体は冗長性であり、想定外の敵を克服する力です。
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