格差社会=日本も世界もカネを奪い合う流行はなぜ?

ベルリンの壁

世界はいつから、今のように殺伐とカネに執着したのか

1989年の、ベルリンの壁の崩壊からです。

ベルリンの壁があった頃はどうだった?

世界は真っ二つに分かれていました。西側と東側に分かれた、東西冷戦です。

英米が中心の西側諸国は、資本主義の自由経済で、民主主義です。

ソヴィエト連邦が中心の東側諸国は、資本主義の計画経済で、社会主義です。

東西どっちも資本主義だった?

東側国のイデオロギーを共産主義と呼ぶ慣習です。だから、資本主義対共産主義と言われやすいのですが、共産主義国も資本主義には違いなく、なかなか定義が複雑ですね。

ベルリンの壁が崩壊して間もない1991年に、ソヴィエト連邦が解体されました。連邦を構成するアジア寄りのウクライナやカザフスタン地区などは、脱退して独立国に戻りました。ハンガリーやチェコスロバキアなど息がかかったヨーロッパ国は離れました。

ウクライナ地区の政治を、モスクワで遠隔操作する非効率は終わりました。

その瞬間、東西冷戦が終結して、世界は自由と資本主義がブームとなりました。必ずしも民主的ではないのですが。

壁が崩壊した幸福を起点にして、全世界が次々と荒れた

その後、不吉な問題提起がありました。ひとつは、世界各国が何を尺度に国を運営するかが、不透明になったことです。放任されて、全員が自由経済ですから。

もうひとつのキーは『文明の衝突』という書籍に示されたように、新たな憎しみの対立軸が生まれる問題でした。

世界各国が、敵と味方が読めない不安定な状態になり、民族や宗教の単位でぶつかり合うであろうとの予言でした。

ユーゴスラヴィアが典型で、サッカーで聞くクロアチア共和国や、スロヴェニアやセルビア、ボスニアヘルツェゴビナなどに分裂。チェコとスロヴァキアも分かれました。

ユーゴのサラエボ冬季五輪の跡は廃墟だし

日本とは違い、海外には連合国やグループ国がけっこうありますね。世界の動きに連動して人々の気持ちが動揺すると、国民の分断が軍事衝突にもなるのです。

日本で内戦が起きにくいのは、政府が末端までお金を与え、教育を充実させてきたことも一応あります。一億総中流の高学歴社会が、日本の決定的な治安維持でした。もし貧困を許せば、日本でも共産主義革命や内戦や武力衝突が起きる確率は一応高まります。

貧困は死に直結しますから、命知らずのアナーキスト(政府撲滅主義者)が出てきます。テロをやって直後に自殺する、事件後も理解されないタイプが互いに反応し手を結ぶ。

途上国では、政治家の暗殺が多いのです。

武力ではなく、ネットでの攻撃や抹殺というかたちもあり得ますね。

壁をなくすシンボル的な意味が、グローバルへと進んだ

ベルリンの壁が崩壊した時に、コンクリートの厚い壁を、ツルハシや削岩機で砕いて壊す東ドイツ市民の映像がありました。カンカンカン、ガガガガガガと音も入っています。

あの壁をなくす行動は、一種のメタファー、暗喩、あんゆ、つまり連想ゲームのイメージとなりました。それが、20世紀終盤の10年間に影響を与えました。

国境をなくせば、みんなが幸福になれるという思想形成です。壁や柵があるから、人間はだめになる。壁を壊してなくせば、みんなハッピー。「楽園だぜ、イェーイ」。

区切りを悪もの扱いする?

ボーダーレス社会という美しい言い方です。

言葉も宗教も生活習慣も全て違う人がいっしょに暮らそうという、動物学的に無茶な思想が蔓延しました。グローバリズム思想です。その無茶に疑問を持つ者を叩くプロパガンダとして、「人種差別主義」や「レイシズム」の語が武器に使われます。

「国際化」にはインターナショナルとグローバルがありますが、グローバル化で一人一人の価値を下げられる裏社会のメリットが再発見されました。人材需給の経済学が20世紀末から悪用されました。それが、今も続く世界同時不況と格差拡大の背景です。

具体的には?

構造改革の規制緩和もそうです。規制は壁だから、ベルリンの壁みたいにじゃまになる。壊して自由にしようという思想です。ノーボーダー。一例は白タク。

タクシー会社が持つ既得権を壊すために、2種免許と緑ナンバーの壁をなくす考えです。有資格者だけがタクシー業につける現行制度を、個人の自由を奪う悪とみなし、旧ソ連の社会主義体制を思わせて不吉だとする思想信条です。

運転資格の既得権をなくせば誰でも自由だし、自己が起きても事故責任だよと。そうしてタクシー運賃を価格破壊し、労働者を賃下げして株主にみつぐやり方。

ええっ、犯人は株主だったの?

ええっ、グローバルって、国境を超えたお金の移動が主役なんですけどー。ファンドとか持ち株会社の世界なんですけどー。

グローバル社会ではピンハネ業が上に立ち搾取し、日本でも起きています。文系の口先男が気分しだいで、理工系の技能者を支配する風潮もそれですよん。

こうして世界各国の伝統の秩序を壊し、文化を壊して人類の貧困化を進める。弱者を淘汰するよう福祉を廃止し、かせげるお金の大小で人の価値を測定する。

このように世界全体を貧困化させ格差拡大へ至らせる、その方針は明文化されています。それが『ワシントン・コンセンサス』(1989)です。

外部→ ワシントン・コンセンサス

今だけ・金だけ・自分だけ思想の起点は、1989年のベルリンの壁崩壊でした。日本は平成になり消費税で通貨削減し、人権侵害を国策で進めました。
Photo: by Morgana Bartolomei on Unsplash