51 コブ滑りがうまい人は、元ヘタクソ?

1 整地のパラレルができるまでは、コブ斜面に入らない方がいいのか?

早く試した方がいいでしょう。コブはパラレルの教材にもなるからです。例えば、体を谷へ向ける基本があいまいだと、コブでスピンして後ろ向きになりやすいので、日頃から潜伏しているクセがチェックできます。平らな斜面をよく練習してから行く保護主義は、期待はずれになります。私もここで失敗しました。

2 コブがうまくなる人は、どんなタイプか?

「物ごとには必ずコツがある」という考えで、何度でもトライするあきらめない人です。朝から来て、板が外れてひっくり返って、またリフトで上がってきます。午後に見ると、また来てやっている・・・あの人転んでばかりだね・・・たぶんそういうタイプです。私はそのタイプでないので、長い年月へたでした。神のように偉大なコブ斜面のヒーローも、元はさっぱりダメな初級者だったはずで、滑走量がモノを言うのです。

3 コブに飛ばされて歯が立たない初級者が、無理なく慣れる練習法はあるのか?

コブ斜面の端にある低いコブで試したり、ゆるめの斜度部分にできるコブを利用します。浅いコブを選んで、できそうなところからトライします。半分逃げながら、半分挑戦し、できる範囲で慣れていきます。

4 中斜度のゲレンデでも、なぜか日によってコブができるようだが?

暖かい日のシャラシャラ音がするみぞれ雪は、板で押されるとごっそり移動しやすいので、ゆるい斜度でもコブができやすくなります。15度の斜面に発生することがあり、そうしたゆるいゲレンデだと、考えながら、実験しながら滑るゆとりができます。しかも、スピードが落ちやすい雪質なので練習になります。スキー場側も、ゆるめのコブ斜面がどこかに残るように、段階練習へ配慮して欲しいと思います。

5 恐がらなければコブなど簡単だ、というのは本当か?

思い切って飛び込めば滑れるのも一理ありますが、たいていはベテランの豪語や軽口です。横に行かずに下に行けと言われて、恐いまま飛び込んでもすぐ転倒します。なぜなら、滑り方がわからず転倒がわかっているから恐いのです。無理する必要はなく、横へ逃げながら慣れるのも方法です。

6 横へ逃げるとかえって難しくなる、というのは本当か?

本当です。コブ斜面にはスキーヤーが通って掘れた道が何本もあり、それは下へ向かうジグザグ道です。コブの形状は上空から見ると実は縦長なので、横へ進んだスキーヤーは、道と道の間を仕切るバリケード状の側面に板が刺さったり、ぶつかって外れやすくなります。かといっていきなり道を下向きには滑れないから、横へ逃げて体の上下動に慣れていく方がましなわけです。

7 コブ斜面は、整地の上達に比例して上達するものなのか?

全くといえるほど比例しません。時々こういう人がいます。コブ斜面で見せた要領のいい動きが、途中から整地に変われば、とたんにぶきっちょなパラレルになる人です。早くからコブに熱中した結果、コブの技術が整地の技術を超えてしまったのです。普通の人は、整地に比べるとコブが苦手な場合が多く、この差は単に練習時間の配分によるものです。

8 整地の上達と、コブの上達が、比例しないのはなぜか?

ターンの要領が大きく異なるからです。コブでは、ベンディングターンと呼ぶ、足を引っ込めながら曲がる方法を使います。コブの肩に板のセンターが乗るとゼロパワーでおもしろいように回れるし、棚状の受けた部分でブレーキ・アシストされるなど、凹凸の利用法を覚えれば意外に楽に滑れるのです。

9 初心者の目に、真下に切り立つ恐怖の斜面は、数字では何度なのか?

35度の斜面は、初心者には垂直に見えると言われます。NASAのスペースシャトルは当初、帰還時に35度の俯角で滑走路に向かったので、飛行士は真っ逆さまに墜落させられると思って一瞬ドキッとしたそうです。

10 直角の半分にも満たない35度が、そんなに急に見えるのか?

私がビギナー3日目で30度の斜面に行った時は、最大35度だと数字を知っていても、80度ぐらいに感じました。切り立ったガケにしがみついているような見え方で、滑ろうにも飛び降りる感覚、転べば真下に墜落する感覚でした。実際に転べば5~10メートル落ちるだけなのに、500メートル下のリフト乗り場までポーンと落下する気がしました。急斜面を「壁」と呼ぶ命名にナルホドと納得しました。

11 ならば普通の人の目に、本当の90度の壁はどう見えるのか?

もし体が90度になるまで下を向いた場合は、90度を超えて裏返って回り込んだ錯覚が起きます。

12 初級者に垂直に見える35度を、上級者はどう感じているのか?

上級者には、35度の斜面は35度に見えます。初級者が感じる断崖絶壁のイメージではなく、もっとずっと寝たゆるいイメージに見えます。初級者が壁からポトンと真下に落下するように感じる場所でも、上級者なら前へ向かって飛び蹴りしている感覚です。「コブはスキー人生の縮図」の根拠が、ここにあるのです。