40 カービングスキーの長さを選ぶ

1 カービングスキーの長さは、旧式スキーに比べて明らかに短いが?

誤解しやすい点ですが、長さはカービングスキーの定義と関係ありません。ただしカービング化に派生して、短く作られるようになりました。徐々に短く作るうちに、旧式スキーより30センチ短くても、安定性が上回ることがわかったのです。従来200センチの男子デモ用は170センチに、175センチの女子レジャー用は150センチに短縮しました。

2 カービングスキーの長さは、初級、中級、上級、それぞれ男女別に、何センチがいいのか?

当面、150~170センチの範囲に大人の全スキーヤーが入り、技量よりも回転弧やスピードの指向で決めます。ちなみに旧式スキーは、女性初級で165~175センチ、男性上級で190~205センチ程度で、つまり大人のレンジは165~205センチでした。旧式スキー時代に小柄な初心者女性が使った165センチは、現在のレジャー用カービングスキーでは男性上級用となり、それほどスキー板は短くなっているのです。

3 身長プラス何センチという、昔ながらの基準はどこへ行ったのか?

2000年現在、男性デモは大回り用で170センチ、小回り用で160センチを選ぶケースが多いようで、平均して身長付近か少し短い計算になります。パフォーマンスモデル(デモ系上級用)の多くは150センチが最短となっており、これは女性用の設定のようですが、長身の男性でも問題なく使えます。結果的に、身長より少し短い板を選べば間違いないようですが、身長と無関係に選ぶべしという論も一理あります。

4 カービングスキーの場合も、腕が上がるにつれて長くすべきか?

その常識は終わりました。不要です。昔から、長い板に替えたくなるのは、スキーが上達した証でした。最終的には身長プラス30センチか、または200センチの大台を上限に落ち着いたものです。しかしカービングスキーでは、特にパラレルスキーヤーにとって、出世的に伸ばしていく意味はありません。

5 教官とビギナーが同じ長さだなんて、昔の感覚では信じられないが?

教官の方が短い場合さえあるでしょう。しかし初級者は長めではなく、短めの150センチがいいでしょう。これからパラレルという人が160や170で練習しても、カービングスキーなので上達は早いでしょうが、それでも短めの取り回しの良さはやっぱりあって、150センチをすすめます。ただし150は業界の推奨より短めで、私の趣味も含まれています。

6 長さの違いによって、スキー板の性質はどう変わるのか?

すぐに感じるのは、同モデル内では短いほどクイックに曲がり、長いほどゆっくり曲がる点です。短めの150センチと比べると、長めの170センチはゆったり高速クルージングの浮遊感が魅力です。180センチだとさらに高速安定しますが、大回転競技やオフピステに向くものの、広くないゲレンデのレジャーシーンにそのプラス10センチはなくてもいいでしょう。

7 製品の半径と長さに、何か相関関係はあるのか?

概してRが小さいスキー板ほど、長さが短く作られます。つまり、短い板がクイックに曲がるのは、短いからではなく設計Rが小さいからです。およその数字は1999-2000年モデルで、R18メートルなら170センチ、R15メートルで160センチ、R13メートルで150センチ、R9メートルで140センチです。もちろん各製品の指向しだいで、160センチでR20メートルのもあれば、10メートルのもあります。

8 一モデルの中の長さ違いで、サイドカット半径はどう違うのか?

スキー板は衣類のサイズ違いのように、ひとつのモデルでいくつかの長さが製造されます。製造ルールは3通りあります。(1)前中後の幅が一定、つまり短いとRが小さくなる。(2)Rが一定、つまり短いと前と後の幅を狭く作る。(3)幅とRが同時に変化、つまり長さが違うと共通した数字がない(センターだけは同じ幅にした製品が多い)。

9 サイドカット半径が小さいモデルほど、より短く作るのはなぜか?

長いままRだけを小さくすると、トップ幅が大きくなりすぎるからです。コンピューターで分析した数字で説明します。欧州A社の97年製に、R9メートル、長さ140センチ、トップ幅109ミリのモデルがあります。他社に影響を与えた名作です。もし同じR9メートルで、従来並みの190センチにすると、トップ幅は約15センチにもなります。2本並べた幅が30センチと、かなり大きく重くなります。そこで前後の50センチ分をばっさり捨て、140センチに切り詰めれば、2本並べた合計幅が22センチ程度と、ほどよい規模に収まるわけです。

10 結論として、カービングスキーでは長さをシビアに選ばなくていいわけか?

Rが小さい製品は短いのだから、身長にシビアに合わせること自体が無理です。カービングスキーの長さは、体格や技量ではなく、指向と個性で決めます。だから実はどれでも楽しめて、長さの買い間違いは起きにくくなりました。思い出してください。旧式のずんどうスキーは1モデルで、170、175、180、185、190、195センチと、5センチ刻みで6、7種類の長さが作られたことを。気むずかしい道具だったので、衣服以上に細かいサイズ調節が必要だったのです。

11 カービングスキーの作り分けは、5センチ刻みではないのか?

150、160、170と、短めの割に10センチ刻みの3種だったりします。155、170の15センチ刻みの2種や、140センチ1種ポッキリというモデルもあります。もうひとつ特徴的なのは、158センチや163センチなど、公称長さが5の倍数でないモデルが出てきた点です。