37 カービングスキーのサイドカット半径は、何メートルが理想か

1 カービングスキーにも色々あるが、スペックで一番大事なのは何か?

サイドカット半径Rの数字です。それ以外のスペックは、Rの効力を強めたり弱めたりする役割になります。

2 Rの数字にこだわるな、という論もあるが?

少しの違いにこだわる必要はありません。ただ、板の性質を示す一番大事な手がかりには違いありません。R17メートルより12メートルの方が、切るカービングターンであれ、ずらすスキッディングターンであれ、ゆったりと大きなターンよりは、小さく素早く刻むターンに向くからです。話を難しくしているのは、メーカー自身が宣伝したキャラクターに仕上がっていない製品が混じっている点です。

3 パラレルの壁に向かっている初級者は、Rが何メートルの板がいいのか?

R14メートル程度なら、旧式から交換して1時間で上達の手応えがあるはずです。実用的な範囲は、R10~17メートル程度でしょう。

4 生まれて初めて滑るビギナーには、R何メートルがいいのか?

何日か滑った初級者と同じで、やはりR14メートルです。初めてスキーをつけたビギナーは、カービングターンで滑るわけにはいかず、ずらして速度をぐっと落とす方法を多用します。Rが10メートルぐらいに小さいと、唐突にブレーキがかかり、自然なずれ感が得られにくい傾向があります。しかし1日目の人が、7日目の人と違う設計の板を使うのは現実的でないので、同じ板を使います。

5 Rが14メートルの板だと、ターンの半径は14メートルになるのか?

全く違います。サイドカット半径Rは、平面図での設計半径です。雪上で偶然その数字で回る瞬間もありえますが、直接の関係はありません。実際のターン時には板をローリングさせ、エッジのついたフチだけを雪に押しつけるので、R14メートルの板はたわみ、雪に接する弧はR8メートルなどに小さくなります。しかし多少はズレて、結局ターン弧は12メートルや20メートルなどになります。

6 その大きな誤差は、どこで生じるのか?

たわませ具合によって、回転半径は大きく変わります。強く押しつけると、接する弧の半径は7メートルや4メートルになってクイックに曲がります。と同時にずらし具合でも大幅に変化し、エッジを食い込ませず外し気味に雪面をなでて滑れば、半径45メートルにでもふくらみます。R14メートルの板なら1ターンで28メートル進むという計算は、単なるギャグです。

7 設計Rが大きすぎたり、小さすぎるスキー板では、何が起きるのか?

R20メートルなどゆるやかな板は、シェイプがずんどうに近くなって、まるで旧式板のようにターンが難解になり、すっぽ抜けの暴走も起きやすくなります。逆にR10メートル未満だと、雪を引っかきすぎてガクッと失速しやすい傾向があります。その中間のどのあたりがいいかといえば、今のところR14メートルだと考えます。