20 社会人はなぜスキーが上達しないのか

1 社会人のビギナーは、普通はパラレルにこだわっていないが?

だから普通は挫折するのかも知れません。普段の生活にない動作は、何となく身につきはしません。さっそうと滑るスキーヤーの多くは、雪国出身か大学スキー部出身ですが、合宿では寝ても覚めても「目指せパラレル」の合い言葉が飛び交います。スキー得意芸能人や皇室のスキーファンも、ある時期パラレルの壁に執着しているのです。

2 いつの時代も、学生は習得に熱心なようだが?

学生にとってスキーの旅費は非常に大きいので、モノにしようと熱心なのが出発点の違いです。ゲレンデから旅館に戻った夜、先輩は後輩から技術の質問攻めにあい、スキーのノウハウ話で持ちきりです。ゲレンデで起きたこと、感じたことを討論し、スキーの難題を全員で共有して理解が進みます。決まって聞く言葉は、「帰るまでに何かをつかみたい」で、皆が真剣。体育会系でない遊びグループでも、似たものです。

3 学生と比べて、社会人はどう違うのか?

社会人は昼のゲレンデを我流で流し、夜は仕事や社内の話題に流れ、ゲーム類に興じて過ごすなど、旅行がスキーにフォーカスしにくいのが特徴です。興味深いのは、社会人もパラレルレベルとなれば、他のスキー場の体験談などで話がはずむのに対し、ボーゲンレベルの社会人はスキー以外の世間話が好きという傾向です。スキー体験が少ないから当然かも知れませんが、アフター時間にスキーから離れたがるようです。

4 社会人でも、旅費の高さを気にする人は多いと思うが?

熱意の個人差は当然ありますが、社会人は総じて熱意がぬるい感じです。1日目が終わった夜に、コース状況や技術的な疑問点を調べるなど、2日目に備えることがあるのに、惰性的な日程消化で何となく旅行が終わります。学生が自分の技量に向き合おうとするのに対し、気持ちがスキーに向かっていない感じです。

5 学生の方が、上昇志向が強いのはなぜか?

人生経験が少なく、世界が狭いせいもあるでしょう。概して学生のうちは他人の高い技量に素直にあこがれ、自分もそうなりたいと夢中になる謙虚さがあります。社会人になると、本業との折り合い意識があるのか、スポーツの現場に今いるのに真剣にならないようにみえます。「へたで結構」と早く投げて、貴重な時間をさいて来ている割に、関心がスキーに集中しないのです。

6 学生は行く回数からして違うのでは?

平日でも行ける学生の方が、練習量を増やせるのは当然です。そもそもスキーが上手な人は、プロを除けば日曜や連休が休めて、仕事に忙殺されたり残業を家に持ち帰ることの少ない職業など、要するにヒマがある人に違いありません。しかし時間がある人でも、「気が向けば行く」が裏目に出て、休日を活用せずにフイにしています。行けるチャンスもあったのに、のがしています。

7 行きたい日に行く、この当たり前の行動の何がまずいのか?

「行きたくなくなる日」が、初級者の全員に必ず訪れるからです。もし気の向くままに行動すれば、自動的に行くのをやめてしまいます。テンションが途切れ、パラレルに届かず撤退。この難問を、頭脳で越える策が必要です。スキーは上達したから続いた、続いたから上達したという具合に、動機と腕前が好循環します。おそらく他のスポーツも同様でしょうが。早いうちに日数をかせぎ壁を早く越えないと、万年浪人になります。

8 気が進まないのに行く秘策があれば、それこそ教えて欲しいが?

簡単です。私は晩秋にカレンダーを見て行く日を決めておき、その日が来ればとにかく行きました。

9 気が乗らないのに行って、向こうで後悔しないか?

結果は逆です。終日ゲレンデで過ごせば、帰る夕方には、来て本当に良かったと思うものです。吹雪や雨に見舞われてさえ、しみじみ良かったと感じ、帰り道で得した気分になります。楽しいから行くのではなく、行くから楽しいのです。

10 カレンダーに従うような特訓めいたことを、いつまで続ければいいのか?

のべ32日、つまりパラレルの壁を越える日までです。その後は気持ちも価値観も、スキー優先に変わってしまい、行くなと言われても行くかも知れません。子どもが自転車に乗れるようになると一変し、寝ても覚めても自転車べったりになるようなものです。

11 最初のうちは、スキー旅行を何日もまとめて取ればいいのはなぜか?

旧式スキー時代に、ビギナーの初回は連続3日以上が理想だと知りました。その根拠ですが、大勢で行った初日の夜、予想外の難しさにショックで泣きそうな顔がいくつもあります。それが3日目の夜に、やっと笑顔に変わるのが常でした。経験のある初級者でも、3日目にスキーの手応えが戻ったとの声が一番多く、2日で帰っては不完全燃焼だとわかりました。今となってはカービングスキーなので、1日で昔の3日分の成果は出せると思いますが、入門初期の密度を高めることは大事です。