19 日数を増やすという、わかりきった問題

1 スキーへ行く日数を増やすには、どうすればいいのか?

「この冬は8日滑る」と、先に数字を決めます。6日でも4日でもいいから、数字の枠組みを自分に強制し、後は実行するだけです。

2 具体的にこの冬8日だとか、6日だとかは、何を基準に決めるのか?

32日という数字を、一冬に滑る平均日数で割り算すれば、何年後にパラレル達成の記念日が来るのか、大ざっぱに予測できます。「自分はスキーできます」と4年後に胸を張るなら、1冬に8日行く必要があるし、7年が目標なら5日程度行くというわけです。

3 日数にかまわず、ひたすらがんばるよう心がければ、とりあえず何とかならないか?

そうして皆さん、足が遠のくのです。例えば自動車学校の練習で、履修時間を考えず、ひたすらハンドルにぎってペダルを踏む無計画な自習にすれば、免許が取得できない生徒が増えるでしょう。クランクが何日目かを知らなければ、難しい局面で不安にかられ、第三段階の前に焦って悩むことでしょう。

4 自動車学校のようなカリキュラムがあれば、スキーヤーは安心できそうか?

それは確実です。「32日練習すれば、板を平行にしてカッコ良く滑れる」と、最初に全員が言い聞かされたとしましょう。すると20日目の人がまだハの字であっても、「オレはスキーに向かない体質だ」と嘆いて放り出すなど起きるわけがないし、40日でまだの人も「自分は回り道して遅れた」ぐらいに思うだけです。

5 自分の気持ちに忠実に従えば挫折して、数字に頼れば続くわけか?

結果はそうなっています。スポーツに必要な理論武装のひとつは、日数スケジュールです。人が何かを習得する時、習得後の大きな楽しみを担保とし、今の小さな楽しみに加算し、苦心を打ち消して行動します。そもそも初級段階では、習得後に得るものがどの程度か、分量に見当がつきません。ならば日数の数字を目安に行動すれば、挫折も防げるというものです。

6 スキーでは、自動車学校のようなシステムはないのか?

レジャースキーでは全く聞きません。それを具体的な数字で表せないかと考えた結果が、かつて私の作成した人類初のスキー習得日数ガイドとグラフです。ところで、自動車学校にいくぶん似ているのは大学のスキー部で、他に雪国では児童~学生向けの練習キャンプがあります。普通の社会人なら、仲間をつくって中で教え合い、時々スクールでプロからヒントをもらうのが現実的です。

7 こんなに滑ったのに上達しないと悩む、それを自分で解決できないか?

1日行くたびに、日記をつけます。何年何月何日、どこへ行って、天気がどうで、雪質がどうで、自分が何をし、何ができたかを簡単に記録します。旅館で騒いだ話や割り勘の計算などは書かなくていいから、自分のスキー技術に起きた変化を記録に残すのです。「こんなに滑ったのにダメな自分」が錯覚だと知り、日数相応に進歩していることが理解できます。

8 なるほど毎回の日記をつければ、達成度が確実につかめるわけか?

科学の基本は数を数えることです。数えて記録すれば、20日は20日にすぎません。10日の2倍であり、40日の半分です。繰り返しますが、20日でベテランになれて、周囲から尊敬されるスポーツは存在しません。「いったい、いつになればまともに滑れるのか」と、20日をまるで永遠のようにため息をつき、人生の大半を費やし、果てしなき挑戦を終えたかのように、真っ白に燃え尽きて、後には灰だけで燃えかすも残らない、そんな事態は日記をつければ避けられます。

9 そうして日数を増やす効果はわかっても、出発する準備がまたおっくうだが?

初級者が明日行こうぜと突然誘われて、ヒマなのに渋ってしまう主因は、パラレルの壁の敬遠に違いありません。しかし、道具が家の中に隠れていることを思えば、考えてしまうでしょう。

10 いきなり行こうと言われても、急には動きようがないが?

それでもスキーは突然行くものです。ある年、旅行会社のバスツアーを予約しました。出発は30時間後の明日夜ですが、予約は提携社全体で私一人でした。ちょうど雪不足で、中止もありうると念を押されました。ところが出発時には、9割の乗車です。大半の人は、出発10時間以内の当日昼に予約して駆けつけたわけです。理由は出発20時間前に大雪情報が入ったからです。暖冬が続くと、突然の決行が当たり前になります。

11 いつ積雪があってもいい対策はあるのか?

冬の足音が聞こえれば、あちこちにしまい込んである道具を集め、持って行く物を大きなカゴに入れておきます。段ボール箱もよし。車の場合はカゴごとのせ、バスならカバンへと抜粋します。旅慣れた人が、旅行カバン一式を常時スタンバイにする方式です。用品を前もって一カ所に集めておけば、スキー場は身近になります。