16 雪を押さえるって、どういう意味?

1 よく、板を踏んで雪を押さえろと言うが、具体的に何をするのか?

ひざを屈伸して、板を上下に押し引きします。スキー操作の極意のひとつに、加重と抜重があります。静かに立っているのではなく、板を雪に押しつける時間と、その反動で浮き上がりぎみの時間を、3秒とか1秒の間隔でリズミカルに繰り返します。伸び上がる最中が板を押しつけた加重となり、上がりきった時に浮きぎみの抜重となるのが基本です。

2 板を押す目的は何か?

ひとつは押した板の反発でフワリと浮いて、エッジの食いつきをゆるめることで、ゆるんだすきに板を切り返します。もうひとつはターンのリズムをつくるメトロノームです。3秒間隔で抜重した場合、3秒ごとにターンの左右を替えることになります。さらに、エッジを反対側に切り替える時、一瞬起きるフラット状態で足場があいまいになるので、切り替え直後にぐいとエッジを押しつけ食い込ませます。これで谷回りで加速が始まっても、外へふくらんで流れるのを防げます。

3 板を押すと、体重が増えたりするのか?

雪が受ける荷重は増えます。総重量60キログラムの人が、遠心力で1.5倍の90キロ荷重となってターンする間、足の裏でさらに踏んでも、90キロを超えるのはありえなく思えます。しかし踏みつけて足を伸ばす最中には、荷重は100キロ、120キロと増えます。そして足を縮める時に、40キロにでも下がり、フワリと浮きそうになります。時には0キロやマイナスとなって、雪から離れて飛び上がります。

4 どういうタイミングで、板を押せばいいのか?

谷回りに切り替えて一息した次の瞬間から押します。このタイミングはカービングスキーで滑る時の目立った特徴で、旧式スキーとは少し違う動きです。そうして板が谷回りで回り込んでいき、真下を通過して、山回りに転じていく間中、意識して足で押し続けます。

5 初級者は、そこが甘くて暴走するのか?

確かに暴走の多くは、「板を押して引いて、押して引いて」のリズムが、何かの理由で途切れた次の瞬間に起きます。ゆくてに雪塊やうねりが見えた時とか。初級者は概して動作が眠く、リズムにメリハリがないので、谷回りの前後に浮き乱れがちです。わざと気張ってリズムをつければうまくいくでしょう。上下動は、激しくおおげさにやれば理解しやすい技術のひとつです。

6 ボーゲンでも、そうした押し引きは必要なのか?

やはり必要です。上級者のボーゲンを見ると、ギューン、ギューンと明快なリズムで回ります。初級者はあの回り込むエネルギー源は、回旋させる筋力だと誤解しますが、板を押しつけてたわませるから小さく回り込むのです。小さく回るには、3秒押して切り替え、3秒押して切り替え、とテンポを早くし、10秒など長引かないようにします。

7 昔よくあった伸身や屈伸の大きな動作は、カービングスキーにも必要なのか?

実はカービングスキーに慣れると、体全体の伸縮はごく小さくして、足だけの伸縮で十分足ります。旧式スキーでは、山回り後半にたわんだ板の弾力で強く伸び上がり、板が一瞬浮くぐらいにして、エッジの食いつきをゆるめて谷回りへ切り替えました。音まで出しながら、飛び跳ねていたのです。

8 旧式スキーで上下動を盛大に行った理由は、板がはずまないからか?

弾力の引き出しにくさが理由でした。理由はもうひとつあり、もし雪面にべったり接触させて待つに徹し、サイドカットどおりにターンすると、ひどい大回りで暴走するからです。板をはね上げて浮かせた次の1秒程度は、レースカーのドリフト走行のごとく、わざとテールスライドさせて板の向きを強引に変え、中回りや小回りを力ずくで成り立たせたわけです。

9 そのねじり回しの秘技も、初級者の目に謎だったわけか?

これが昔の小回りの謎です。板が浮くぐらい伸び上がって、ひざひねりや、かかと押し出しで板を回し込む。これを上級者がさりげなく行うのを見て、初級者も真似ました。しかし初級者は雪に食い込んだ板を、そのままねじり回したので、よろけて転倒しました。

10 カービングスキーでは、ひざひねりや、かかと押し出しも、必要ないのか?

これも少しで足ります。旧式スキーでのひざひねりは、回るのが遅くて待ちきれないので、板をわざと回し込む補助操作でした。かかと押し出しも、早く板の向きを変えてブレーキをかける補助操作でした。これらは旧式スキー特有の欠陥のカバーなので、カービングスキーでは少なくてすみます。

11 姿勢の高い低いはどうするのか?

低くします。初級者は動きのない人形状態をやめて、軽くしゃがんで低くなると良くなります。重心が下がって転倒しにくいのと、足元にふところができて腰から下が動けるようになります。また、雪の凸凹やうねりでショックアブソーバーが利きます。問題はどこまで低くするかで、しゃがみこんで、雪にはいつくばっている気がするぐらい、思い切って低くします。

12 上級向けの本には、姿勢を高くせよと書いてあるが?

上級者の高い姿勢は、初級者の低い姿勢よりは低いのです。初級者が腰高になる理由は心理的な錯覚もありますが、入門当時の腰高姿勢に慣れて固まったせいもあります。試せばオヤと思いますが、頭を10センチ下げるだけで、筋肉の使われ方が違って新鮮さも感じます。ボーゲン段階から低姿勢に慣れておけば、カービングターンを試す日も早まるでしょう。

13 カービングスキーで滑る時、なぜ姿勢を昔より低くするのか?

体を大きく倒して、身を乗り出す姿勢になるカービングターンでは、スキー板は体から遠くへ離れます。頭を高さ1.5メートルに保ったまま45度のバンクをつけるのは不可能なので、20センチ程度下げ、1.3メートルに身を低くします。この時、腰の位置を後ろにやらず、かかとの上方に常に腰があるようにします。