ドラキュラバンクという商品名の貯金箱がありまして、今でも大切に持っている人がいるそうです。
当初は輸入品で、よく見ると手はドラキュラふうの手ですが、かんおけの中にいるのはガイコツです。もっとも、映画のドラキュラは杭を打たれ、朝日に当たってガイコツになって、さらに灰になるから、筋書きには合います。
輸入時の商品名は「コフィン・バンク」となっていて、「かんおけ貯金箱」の意味です。当時、水木しげるの漫画「墓場の鬼太郎」が、「ゲゲゲの鬼太郎」にタイトル変更されてテレビ化されたように、「かんおけ」の語も表に出しにくかった時代なのでしょう。
製造国の意図とは異なる「ドラキュラ」に言い換えたので、コフィンをコインに引っかける英語のシャレは使えなくなりました。代わりに日本では、宣伝広告にこうもりが描かれるなど、独自の怪しい雰囲気が加わっていました。
この絵のモデルとなったドラキュラバンクは、10円玉を平置きすると、手がグーンと伸びてきて硬貨にかぶさるようにして、箱の中にガバッと引いてチャリンと落とし込むタイプです。ゼンマイ動力がオリジナルのようです。
このタイプ以外に、黒い箱の上に10円玉を立てて置くと、中からゆっくり手が伸びて、つかむや素早く引き込んでバタンとふたが閉まり、元の四角い箱に戻るタイプもありました。そちらはドラキュラバンクと呼ばないのかも知れませんが、いずれも手に蛍光塗料が塗られ、夜には緑色に光ったそうです。