太古には、海の果てが存在すると考えられました。海の端では海水が滝となって落ちているのだと、そぼくに考えられていました。世界は平らだというアイデアです。平らだとすれば、端がどうなっているかを説明しなければなりません。
端が滝なら、誰もが恐れます。航海で船がうっかり進みすぎると、戻れなくなって危険です。そしてもちろん、端まで近づいた人は誰もいません。誰も見たことがないのに、怖い話だけが語られたのです。
後に、世界は球形になっていて、海はその表面をくるりと一周してつながっているという、新しいアイデアが生まれました。このアイデアへの開眼と理解は、地域によって大きな時間差がありました。
どちらの説がより突飛かを思うと、世界が球形だと考えるアイデアはとても斬新です。科学であばいて説明はスムーズになっても、ミステリアス度はかえって上がっています。なんたって、地球の裏側では、人は逆立ちしているのですから。
この絵画は、滝の姿図というわけではありません。人のアイデア創造のたくましさと空間把握力、そのアイデアから新たに予想される怪現象への畏怖について、より抽象的な次元で触れてみたいと考えました。