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電子美術館のQ&A

132 失われた30年は逆走した日本経済暗黒史

二十一世紀国際地方都市美術文化創造育成活性化研究会
2021/12/29

――日本の失われた30年とは、具体的に何ですか?

「失われた30年」とは平成日本の長い経済低落です。海外の人も言います。複数の期間があり、2021年12月時点で1989年から32年間の株価低調。1992年から29年間の不景気。1997年から24年間続いたデフレ不況。あと3日で2022年となり、25年目のデフレ不況に突入です。

――不景気が、もう30年以上にもなるのですね?

大学を出て就職した人はもう55歳です。就業人生は全て、景気が落ちる渦中でした。1990年代に生まれた人はさらに悲惨で、小学生になるまでにモンスタークレーマーやモンスターペアレント時代を経て、給食費の不払いや食品の産地偽装、ブラック企業の時代です。父や母がリストラされ失職したり、マイホームを失うなどした世代です。自己責任や自助を強いられ、かなりの人が自殺しています。ネットに自殺を手伝う請負人が現れたり、練炭も売れました。

――30年て長くないですか?

長さが「失われた30年」を読み解く最大のカギです。長すぎます。「石の上にも三年」で済まず、10倍以上です。デフレ不況の24年は人類史上最長記録です。この長さに疑問を持たず、だらだらとつき合っている国民も変です。長い事実がおかしい上に、「日本はこんなもんだろ」と大勢が悟っているのは、いかにもおかしいし。

――日本以外の国でデフレが続かないのはなぜですか?

素直な感覚だからでしょう。腹が減れば食べるから、すぐに解決します。のどが渇けば水を飲む。食べまい、飲むまいとするガンコさがない。30年は、日本国民が努力したが及ばなかった、というのとは違うのです。国民が総じて間違った思想を持って、皆で貧困化を押し進め、日本を壊して回った30年なのです。

――そんな分析、聞いたことがありませんが?

聞いていないから30年も失いました。普通の先進文明国では、不景気になれば解決は比較的容易です。3年で何とかなるものです。その10倍も不景気を続け、今も記録更新中ということは、人々が考えていることも行動も、何もかも全て間違っているのです。正しい部分がどこにもないわけです。日本経済を壊して壊して壊して壊してを、延々とやっているから経済が壊れたのです。壊していないつもりで。

――そういう壊滅なら、経済以外でもありそうですね?

例えば新しく制作された美術作品に芸術性が乏しい現象です。努力して及ばなかったというよりも、方向が見当違いの努力と考えられます。逆走です。「芸術とは何か」という命題に対して「前例に似ていること」が主流だから起きています。「前例に似ていないこと」をダメとするから、芸術界は壊れているわけです。びんのフタが開かないのは、回す力が足りないのではなく、逆回しだからです。

――日本の経済は、どう逆回しされていますか?

通貨削減という逆回しです。みんなでお金の総量を増やさないようにがんばっている。減らそう減らそうとがんばっているのです。日本国内にお金が足りません。故意に通貨不足にしてきました。イコール貧困化の促進です。

――国内のお金の量をわざと減らせば、国民一人当たりの取り分は減る計算ですね?

すると皆は企業から物を買わなくなり、企業の業績が落ちて所得減や解雇で貧困化が進みます。企業は海外に買収され全て失います。この原理をわかっていれば不況は3年で済みます。なのに10倍以上も続く。努力があべこべだからです。言うなれば、凍傷の足を氷で冷やしたり冷却スプレーを吹きつけるのにけんめいだった失敗です。やることが逆。難病でもないのに変に長く続くのは、病状を悪化させようと皆が行動しているから。

――国のお金を減らせば、何が起きるのですか?

経済が縮小します。日本語で「経済縮小」と言います。国のGDPが小さくなり、国民のマネーストックも拡大せず横ばいや縮小します。マネーストックとは、国民が所有するサイフのお金と、銀行預金などです。減らせば貧困化します。GDPは国内総生産と呼ばれる指標です。生産の合計であり、支出の合計でもあり、所得の合計でもあるのです。三つは等しくなります。それを小さくして30年を失ったわけ。

――GDPは、みんなの所得の合計でもあるのですか?

貧困化とは、国民の所得が減る現象です。減った人は買い物しません。企業は物が売れません。売れない企業は給与報酬を減らします。減った人は買い物しません。企業は物が売れません。売れない企業は給与報酬を減らします。減った人は買い物しません。企業は物が売れません。売れない企業は給与報酬を減らします。と永久にループします。

――知ってる、デフレスパイラルでしょ?

毎年毎年繰り返してきたこの悪循環が、失われた30年の内部構造です。この悪循環をどうしても断てないのは、国民のほとんどがある思想信条を持つからです。日本を覆いつくす宗教的な信念「国の財源は税金だ」です。この勘違い思想は、かなりガンコです。

――国の財源は、みんなが払う税金ではないのですか?

ほら、ガンコ。国の財源は政府貨幣です。独立国の政府は独自の通貨を持っていて、その著作権も発行権も持ちます。国の予算金は、政府が自国通貨をいちいち追加発行して、増分で支払うわけです。要するに「打ち出の小づち」です。世界各国の政府は打ち出の小づちを持っています。「通貨発行権」と呼びます。

――通貨発行権で出す政府貨幣は、具体的に何ですか?

公債です。日本の場合は、国庫短期証券、国債、財投債などです。地方が地方債を出してもよいのです。よく「国債を発行する」と聞きますが、国債の発行は政府貨幣の造幣です。新造分が予算金になり、正体はデジタル書類です。

――お金がアナログの頃はどうだったのですか?

今と全く同じです。お金の正体は「借用証書」です。発行者が所持者に金額を借りている意味になります。日本のお札には「日本銀行券」と記されます。千円札を所有する人は、千円を日本銀行に貸しているかたちです。

――逆じゃないですか、国民が日銀からお札を借りているのでは?

理解のキモは「千円札」ではなく、「千円」を国民が日銀に貸しているのです。紙製のブツではなくて、記入された千円の値打ちを国民は日銀に貸している理屈です。札ではなく円を国民は貸すかたち。ハードウェアでなくソフトウェア。国民が貸してやった場面はありませんが、お金を発行する本質はそういうメカニズムです。国民がその千円を払って物を入手した時、日銀への貸しを返してもらえるのです。

――いつからそういう制度になったのですか?

お金が誕生した太古からです。大昔は粘土板に彫った活字でした。ところが人類は他民族や他国家と交易するために、レアメタルの金銀でお金を作り、その機能や意味を誤認していきます。国内経済では金額と発行者を記すだけで機能するのに、物理的な価値に重点が移ってしまい、この間違いがきっかけで人類は無駄に大勢が亡くなってきたのです。紙幣をただの紙切れだと笑う者こそが貨幣経済を誤解し、本来なら金貨や銀貨が亜流です。

――お金が本来の借用証書に戻ったのは、いつですか?

現代人がお金を借用証書に戻したのは二段階です。ひとつは大恐慌の後の1930年代でした。「金本位制」で総量が一定の「実物貨幣」のルールを破り、お金をじゃんじゃん刷り足してばらまくと景気が持ち直したのです。通貨発行と民間投入という、いわゆる政府財政出動で、人命を多く救えました。とどめは、1973年に実行されたドルショックでした。この時から「管理通貨制度」の「信用貨幣」に変わりました。

――現代の国の政府は、どのようにしてお金を発行するのですか?

まず政府財務省が公債を発行します。これで打ち出の小づちは振られました。10兆円などの電子書類です。これを市中銀行(みずほ銀行など)が買うかたちで、市中銀行の日銀当座預金を政府預金へその額だけ移動するのです。日銀当座預金はデジタルで、マネタリーベースと呼びます。政府口座に増えた日銀当座預金のマネタリーベースを、別の市中銀行の日銀当座預金へ移すと、その銀行から通貨を発行します。その通貨がマネーストックです。国民の預金やサイフに入れる資産です。

――国債を発行したら、何か犠牲はあるのですか?

ありません。というか、発行しないと国がつぶれます。発行が多いほど経済大国になり、減らすと貧困化します。2020年に政府がコロナ特別定額給付金で、1億2700万人に10万円ずつ配った場合を考えます。13兆円の国庫短期証券か国債を発行します。その証券は13兆円札の意味です。それを生み出すには、誰が何円を負担するかが、日本で勘違いされている焦点です。

――13兆円の発行に必要なコストは、13兆円ですか?

0円です。無料です。タダです。

――だったら、まるで打ち出の小づちではないですか?

その話をしているのです。打ち出の小づちは世にあります。各国の政府だけは、自国通貨をいくらでも必要なだけ発行できます。これを知る国は富裕化し、知らない国は貧困化します。日本は富裕化した後に、貧困化を極めています。貧困化を極めていくプロセスが「失われた30年」だったのです。今もまだ続けています。

――だったら増税してかき集める税金は、何なのですか?

余剰金の間引きです。だぶつきすぎたお金を持つ所有者から回収します。政府はお金を発行して国民へ供給する役目、義務です。国民は企業など職場を通して、そのお金を獲得するのです。しかし獲得が多すぎる人が現れると、その人が買い物しすぎて商品が枯渇し、物価が上昇しすぎてお金の価値が相対的に落ちすぎます。そうならないようお金を回収するのが徴税です。回収した瞬間に廃棄されます。税金は捨てるお金です。お金のゴミなのです。

――それを聞いて、みんなポカーンとするでしょう?

だから30年を失ったのです。金余りの時に、余っている人から回収して捨てるのが徴税です。増税すべきはバブルの最中で、みんながお金を持ちすぎて、ぜいたく三昧する金満の時です。飲んで食べて歌って踊ってオールナイトの朝帰りの頃に、重い腰を上げて増税します。ところが税金を財源だと誤認すると、貧乏で金欠の時こそ困窮者から奪い取ることになります。その場合も捨てています。すると市中からお金が減り、所得が減って物が買われず、所得減でデフレ不況。単純な話です。

――つまり日本では、全く逆をやってきたわけですか?

自滅の逆走だったわけです。世界はインフレ好況なのに、日本だけが延々とデフレ不況です。30年の喪失は「税金が財源だ」が間違っているから。大枠も細部も全てひっくり返っています。美術の芸術的価値と似ています。がんばって届かないのではなく、目標があべこべ。がんばればがんばるほど、いくらでも脱線します。時間とともに目標からぐんぐん遠ざかる逆走です。スピードが遅いからではなく、反対向きだから目的地に着かないわけです。改革が足りないのではなく、改革こそが日本つぶしなのです。

――芸術つぶしの逆走は、どんなことになっていますか?

目立つのはだめ、変わったものはだめ、破天荒はだめ、個性はだめというガンコな教えが、創造性をそいできた逆走なのです。その思想だと理想的なものは平凡の範囲にあるという結論になり、お客は特異性のないものを買わされます。わざわざ入手する意味もなく、市場は冷え続けます。

――美術も、失われた長さは30年程度ですか?

日本の美術は「失われた30年」よりは長いでしょう。経済の場合は今と正反対に好景気だったのは33年前だったから、まだ覚えている人が多くいます。これが「失われた60年」にでもなれば、失われたこと自体が生存者の記憶から消えているから、取り返すことは不可能でしょう。これでよいのだという誤認しか生まれず、好転が閉ざされます。

――若い人は好景気が全く記憶になくて、日本をあきらめていますから?

氷河期世代など人生経験がデフレ不況だけの人は、性格も悲観的で、将来の夢も閉ざされています。「もう成長はないから、右肩下がりを前提に」となり、人との関係も冷めてすさんでいます。東日本大震災の後に、ドイツへ移住する日本人が目立ち始めました。我々の展示活動グループのドイツ展もきっかけでしょう。日本にいてもだめになりそうな絶望感が高まり、現にだめにされました。政府が若者にお金を与えまいとする政策の一例が奨学金のローン化です。私の時は利子ゼロで完済が楽だったのに。

――貧困化したから、不寛容な世相なのですか?

ひとつは自己責任論でしょう。自己責任や自助の信条は、政府が通貨削減したデフレ不況とセットです。政策で故意にイス取りゲームのイスを減らせば、国民は他人にイスを取られまいとの習慣が身につきます。ファミリー以外は敵とみる排他的な性格が根づき、他人に厳しくあたるわけです。私は美術の排他性も、実は経済問題が原因だと感じています。芸能人へのバッシングが流行したのもそれでしょうか。ビルから飛び降りるまでSNSで叩き続ける炎上の風潮は、今も終わらずにいます。

――だから平成から令和時代にかけて、路上テロや放火が目立つのですか?

貧困化で自暴自棄になり他人に復讐するのは、動物の本能でしょう。政治行政が防ぐ気がないのは、防ぐコストを惜しむからで、お金を発行せずに使い回す前提です。この異常な思想が「プライマリーバランス黒字化目標」や「財政健全化」や「財政再建」と呼ばれます。これはガス室をシャワー室と呼ぶ、偽装された恐ろしい用語です。何人もが指摘するように、政府が金欠を演じるお芝居で経済困窮が進む日本で、ナチス化が進む流れが読めます。優生思想や選民思想の肯定もその風潮です。日本にも『T4作戦』を要望する声は、ネットの定番となっているほどです。

――誰が日本経済を壊した犯人ですか?

当然、当代の人気者たちです。政府が通貨を追加発行して国民に渡せば経済成長します。発行させずに回収して減らすように呼びかけた者が犯人です。「政府の無駄をなくそう」「お金をばらまけば日本は破綻する」と言った者たちが実行犯です。「緊縮財政」と「消費税」に賛成の者が、日本国民を大勢死去させたのです。平成のご意見番やコメンテーターなどオピニオンリーダーが、ジェノサイドの進行役でした。石の上にも三年なのに、その11倍の長さも経済が落ち続けるのはなぜか。みんなから広く愛された人たちが、国民を破滅の方向へ導いたからです。

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