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電子美術館のQ&A

128 月へ再び行けないのはMMTをやめたから

二十一世紀国際地方都市美術文化創造育成活性化研究会
2019/6/26

――アポロ宇宙船から50年たつのに、アメリカはなぜその後月面に着陸しないのですか?

ある中学生が答えました。「お金がないから」。「本当に行けたのなら今行ってみろ」に対しては、「400年前の大阪城を今建てないのと同じ」とあっさり。これは情報リテラシーの実験です。アポロ陰謀論などの真相を中学生グループに本やネットで調査させ、リポートを書かせました。結果を収録した本が、何年も前に出版されていました。

――費用対効果という大人の事情は、大人なら知っていますけどね?

あと40日の2019年7月20日で、最初の月着陸から50年です。アメリカ合衆国はアポロ宇宙船の人類月面着陸を7回中6回成功させ、12人を月面に滞在させて探査させ、6人を上空で周回させました。しかし10回中の残り3回を見送りました。私の見解は「需要が薄れた」です。

――次に月へ人が行くのは、どの国ですかね?

当時競ったソヴィエト社会主義連邦共和国が、人類月面着陸の二番をあきらめた点に注目できます。50年たち、二番をドイツや日本ではなく中華人民共和国が目指しています。有言実行中。これは国の経済と関係が深いのです。ヒントは『MMT』です。

――MMTといえば、最近出た経済理論ですが?

MMT(現代貨幣理論)は、現代のお金の機能の解説です。2017年から日本でも紹介され、2018年末に知られ始めました。アメリカ民主党の女性議員が政界に紹介し、2019年4月に日本の国会で質問が出ました。経済人のMMTの理解が遅れるのは、信仰と二つの原理の壁です。「お金は借りると生まれる」「銀行はお金を生む」。

――そのMMTが、アポロ宇宙船の人類月面着陸とどういう関係ですか?

MMT方式で費用をつくって、アポロは月へ行けたのです。まずはこの話。1960年代に先に月ロケットを飛ばしたソ連は、出遅れたアメリカに逆転負けしました。80年代になってゴルバチョフ書記長が進めたペレストロイカとグラスノスチの頃、宇宙開発研究者の告白がニュースになりました。「基本技術はあったが予算不足だった」と。

――同じ頃のアメリカには、なぜ予算があったのですか?

自国通貨を国内で印刷したからです。つまり財源は印刷機。現代の貨幣の生まれ方と同じ、MMT方式の経済運営でした。同じ手法で西側諸国は軒並みリッチになり、日本も似た方法で高度成長時代を築きました。

――1960年代の世界は、東西冷戦でしたね?

アメリカ中心の西側は民主主義で自由経済。ソ連中心の東側は社会主義で計画経済。西側は自由経済を基盤に自国通貨を自国で印刷し、国が積極投資する計画経済を加味して、インフレ好況を維持して経済成長させました。ケネディー大統領の積極財政「ニューエコノミクス」の成果が、アポロ計画でした。日本は夢の超特急です。西へ伸ばした新神戸駅は、今や発着が4分に1本で山手線並み。

――アポロ宇宙船の頃、日本はどんな様子でしたか?

1964年の東京オリンピックの翌年、日本はジンクスどおり経済が落ち込みました。しかし今の緊縮財政とは正反対で、政府の積極財政をやったのです。ただし資金は国債ではなく、ドル借金でした。ドル借金は円の国債と違い自国で印刷できない外貨ゆえ、財政破綻の可能性がわずかでも残ります。安全な円ではなく危険な外貨でした。しかしとにかく政府がお金を用意して政府が支出を率先し、オリンピック不況を克服し、アジアの奇跡と呼ぶ経済発展を遂げました。アート面では、テレビアニメ漫画の傑作が続出。

――疑問ですが、今話題のMMTが50年以上も前にあったのですか?

実はあったのです。MMT、現代貨幣理論は、ある古典的な経済論の貨幣編といえる内容です。その古典とは『ケインズ理論』です。時代背景は、1929年の株大暴落から1941年まで続いた「世界大恐慌」です。その状況を記録した文庫本が今も出ている、空前の大不況でした。手をこまぬいていたアメリカ政府に対し、「政府財政出動のススメ」を唱えたのがケインズという人物でした。

――ケインズ理論は、具体的にどういうものですか?

「デフレ時は、民間企業の前座として政府がお金を発行して買い物すべし」です。理由は、デフレスパイラルの悪循環が起き、民間活力だけでは永久に景気に火がつかないから。そこで民間に成り代わって、政府がまず先に火をつけたまえというコンセプトです。政府がお金を印刷して自身が使い、民間のお金を増やす財政です。好景気の発端のみつくる。続きは一般銀行からの民間融資です。似た発想はエジプトのピラミッド建設で、王が国民に給料を出しました。市場にまかせても、餓死や自殺や詐欺や強盗が増えて、内乱や内戦の末に他国に侵略されるからです。

――1930年代のアメリカは、そのケインズ理論をどう活用したのですか?

世界史に出てくるキーワード「ニューディール政策」でした。金利引き下げと、公共投資です。お金を刷って、国内インフラ整備で需要を創造しました。同じ「1929世界大恐慌」の余波で他国へ進出したドイツと日本を、アメリカが同時に破るのが第二次世界大戦。1950年代の黄金時代へ至ります。松任谷由実の作曲『コルベット1954』のスポーティークーペ車から後の時代です。フルサイズの大型乗用車を、アメリカの若者が乗り回せるようにした。その繁栄の時代が、宇宙開発時代に一致します。

――でも結局、アメリカはアポロ計画から撤退しましたが?

日本の中学生の回答どおり、お金がなくなったのです。地球の直径の30倍離れた月まで行けるほど加速する。高さ101メートルものロケットは出番が消えました。スカイラブやボイジャーなど小計画へ移り、報道もソユーズやサリュートなど、ソ連の宇宙ステーションの話題に変わりました。

――ロケット7回で、お金を使い果たしたからですか?

お金の在庫が底をついたのではなくて、ケインズ理論をやめたからわいてこなくなったのです。アポロ計画に事業仕分けのメスが入りました。思い出します。高速道路を通し、川岸を高くし、トンネル天井を点検する。それらを21世紀の日本で中止して政府支出を経費削減したのと似た緊縮財政です。日本はデフレ下で無茶な節約路線に移しましたが。

――アメリカファーストを生んだケインズ理論を、なぜ70年代のアメリカはやめたのですか?

ケインズ理論に、MMTのようなインフレ目標の財政規律が明示されなかったからでしょう。イギリスは財政出動が過剰に向かい、物価が上がるインフレなのに給与は落ちて失業率が上がるスタグフレーションになりました。英国病というあれです。(編集注:英国病は実は危機でなく、改革の必要もなかった説が近年は有力)。

――その後のイギリスは、どう変わったのですか?

1979年にサッチャー首相が登場します。イギリスはケインズ理論を捨て、新自由主義経済に替えます。同調したのがアメリカのレーガン大統領でした。新自由主義経済は民営化と資本自由化です。日本でいえば80年代からの国鉄民営化、電電公社民営化、道路公団民営化、郵政民営化、先進美術館構想もそれ寄りか。第三セクターやPFIなど官民のヴェンチャーもあります。国営企業を株式会社に変えて売買対象にし、株主の出資で自由競争させて価格破壊します。無政府に近づけていく。(編集注:サッチャー首相の政策で英国の業績は変化しなかった)。

――それらの続きとして、今の令和時代があるのですね?

世界に広がる民泊や白タクの自由参入もそれで、価格破壊にてデフレ化させ労働者(被雇用側)の貧困化を進めます。80年代の構造改革は、民間の自由意思にまかせるリベラル思想でした。構造改革の例は、アメリカの刑務所民営化です。オーナーの持ち株会社は、空いた房を埋めて収益を最大化し、配当を増やすよう所長に要求します。囚人を増やして利用してお金を生むようにと、

――国策で仕組んだ経済成長で、人類月面着陸が実現していた事実に驚きですが?

お金を刷るだけならソ連にもできました。しかし国民の力を結集したのはアメリカの方。FRB(連邦準備銀行)がドルのお金を増やしても、国内の供給能力が頭打ちなら、インフレとなりすっぽ抜けるだけ。お金がだぶつくだけ。そこで、ドルで国内企業から物品やサービスを買い、企業が納品できれば経済成長する、MMTの原理でやったわけです。宇宙服のデュポン社や、ICチップのフェアチャイルドセミコンダクター社などに発注し、刷ったドルが国民へ渡りました。

――アメリカがソ連に勝った、その決め手は何ですか?

供給力です。資本主義の資本は一万円札ではありません。一万円札は資金であり、資本は研究所や工場です。お金を刷った国が勝ちではなく、良品を量産できた国が勝ちです。技術と生産力が焦点です。オイルマネーの中東国が月着陸できないのは、ロケットの研究と技術がないから。大阪城も建築土木技術という資本が必要でしょう。資金も資本も自前のピラミッド建造方式で、アメリカは金持ちの物持ちになりました。一方、計画経済のソ連は全てが官主導のみ、国民は貧困化しました。アメリカの官民連携、すなわち官が主導し民に渡すMMT方式とは明暗を分け、1991年前後にソ連は解体されました。

――21世紀の今は月が遠いのは、新自由主義経済に取り替えたせいですか?

私はそう考えます。アポロ後のスペースシャトルは、使い捨てない経費削減エコノミーで、5機のうち2機が爆発炎上し全員死亡しています。無駄の削減といえば福島第1原発で、津波を想定した防潮堤のかさ上げ工事を、政府支出削減で見送った経緯がありました。これも爆発。新自由主義経済の勝ち組企業に101メートルのロケットは作れず、アポロはロストテクノロジー化しました。後継のオリオンロケットは難航。ピラミッドもバチスカーフも、アポロもコンコルドも人間に無理と結論する陰謀説は、刷ったお金で財政出動する力を知らない節約貧乏的な思考でしょう。

――最近中国の無人ロケットが月の裏に着陸しましたが、あれはどういうことですか?

MMTを完全理解したフシがあります。独裁政権はケインズ理論を調べているはずで、どうやれば国が富み月へ行けるかは、お金を他国から借りずに自国で刷る財政出動式なら確実だと知ったのでしょう。アメリカが実証済みだし。加えて「一帯一路」「AIIB」の途上国支援にも応用中です。中国内の企業が港や空港を設計して、建設作業員も中国から出張させれば、出費は人民元で済みます。

――人民元といえば、中国の自国通貨ですね?

相手国にお金を貸すのでなく、生産を代行する場合、全作業工程を内製化すれば、ドルやユーロや円など外貨準備は不要で、「国の借金」になりません。ちょうど日本の政府負債1100兆円が、円の国債ゆえ破綻しないのと同じです。国債の償還(元金返済)日に、国債を出す(借り換え)。人民元を増刷して、中国製新幹線を他国で作り放題です。ロケットや宇宙服やCPUも中国企業を育成すれば、60年代のアメリカを再現できます。自国通貨を宝と考えず、カードゲームのように切って切って、使い捨てて成果を得るのは、MMTそのもの。というか日本の高度成長と違い、13億総中流に無関心なMMT悪用作戦が、あっぱれ。

――そのMMT方式を、元西側の自由経済国が今やらないのはなぜですか?

利害です。今日本は新自由主義経済でデフレ不況を強め、国民を貧困化させる方向へかじ取りしています。アメリカのウォール街から一笑された消費税増税など、日本政府が経済を悪化させ国を倒すのは優性思想でなく。庶民の資産を消費税で吐き出させて優遇措置で吸い上げる富裕層が、政党に政治献金してきた力学です。独裁国とは違い、民主国は国政が強者に買収されます。これは別に陰謀ではなくて、普通の新聞にそう書いてあります。

――何者か民間人がお金に執着して、国がつぶされているわけですか?

株主の意向が、消極財政や無政府主義を歓迎するのです。アメリカでアポロを終わらせた、その時代の国際的な節目が二つあります。「オイルショック」と「ドルショック」です。オイルショックは、日本でトイレットペーパー不足が起きたあの事件です。中東国の石油が計画生産となり、価格が上がった。ドルショックでは、アメリカがドル紙幣と金の延べ板との交換を廃止し、金本位制下の信用創造と固定相場の為替は終了。アメリカは、MMT方式が全面解禁された時、MMT方式の好景気を中断したのです。

――MMT方式は、世界のどんな国でも可能ですか?

EU国は不可能です。ポンドを刷れるイギリス以外は、フランスもドイツもイタリアもスペインも、統一通貨ユーロを自国用に刷れません。日本の県に似た立場ゆえすぐ金欠になり、一国では大プロジェクトが困難です。だからEU国は中国資金を頼り始め、EU内の要所をスポット的に奪取される恐れがあります。イギリスに奪われた香港とは逆の立場で、中国がEU国の土地を借金のカタで占領できます。EUの自治権没収は金融学者のビジネスだったと知り、自国がつぶされる前にイギリスは脱出を図りました。

――結局、どういう国が世界一の座に上がれますか?

自国でお金が刷れて、自国で物資をそろえられる国です。自国の買い物だけで宇宙へ人を送れたら、地上最強です。他国を頼らずに済むなら、宇宙船も潜水艦も作り放題です。もし自国で作れない物があれば、作れるように鍛える、そのトレーニング代も刷り、国内発注します。このケインズ理論やMMT方式で、ピラミッドやアポロなど超越した成果を出しました。貧困国の感覚では理解できないほど。

――アメリカは最近になって、MMTで強化する中国経済の柔軟性を恐れたのですか?

公式には、技術パクリを国是のごとく容認する中国政府への圧力です。ミッキーマウスやドラえもんやWindowsは、作者に払わない不正コピー品が現地で最大シェアです。1989年以来、アメリカは中国が民主化すると予想し、貿易不均衡を大目にみてきました。最近は認識を変え、人、物、金の自由化に裏があり、資産争奪で留学生を送ってきたのだと疑い始めたのです。現代の資源は知的財産権が最大です。ハイテクにアートやデザインも含めて。

――MMTという自由経済の伝家の宝刀を、独裁国に使わせてなるものかと?

アメリカの懸念は、非民主国がMMTを抵抗なく用い、宇宙と海洋で軍事覇権を獲得する未来図です。アメリカは選挙がある民主国ゆえ独裁国より行動が遅く、一方EU国は自治権を捨て同盟になりにくい。それでイギリスがEUを脱出し、MMT方式ができる民主的な自治国へ戻るのを、アメリカ政府は歓迎し、アメリカグローバル企業は不歓迎なはず。日本では伏せる話ですが、世界は南北冷戦の再編でGDP大国が小国を食うマウンティングが進んでいます。日本は食われる側に回っています。

――平成時代の日本の失敗はどこですか?

日本の勘違いといえば、子育て補助を増やせば、大学補助を減らすなど、国の支出を奪い合う旧ソ連の感覚です。貨幣プリンターがあれば財政危機はないのに、日本は危ないぞと騒いでお金を止めた結果、お金が止まって斜陽化したドジが日本です。現実には、政府が宇宙に投資すれば、国内にお金は逆に増えて月へ行けてマイカーは高級化、若者の結婚も増えて、美術を買う人も増えます。それがマクロ経済。具象と抽象の対立に似た、新自由主義経済とケインズ理論の対立は社会の空転であり、インフレで前者、デフレで後者を使えば済む話です。

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