現代美術とCGアートの謎と疑問に答えるQ&A もくじ
電子美術館のQ&A

125 芸術よりも消費税が理解できないのはなぜ

二十一世紀国際地方都市美術文化創造育成活性化研究会
2019/5/30

――日本人が生涯わからない分野といえば、何といっても現代アートでしょうね?

現代アートの難易度は一番ではなく、二番かも知れません。最近気づいたのは経済分野です。芸術以上に、お金や税金への理解が難しい疑いです。例えば国税は、国民に理解されていません。税金とは何かは抽象の壁です。

――国の税金は、国家の運営に当てる大事な財源ですからね?

完全に間違った説明がそれです。国の予算や運営費、運転資金、準備金など、国庫の財源をつくるために国民から集めるお金が国税だという説明は、全くの誤解釈です。「手が器用なほど芸術性が高い」式の説明よりも、人命に関わるだけに害が大きい間違いです。

――でも日本でお金が足りず、皆も国費づくりの増税を容認して耐え忍んできましたが?

無意味な忍耐でした。国税はインフレ抑制です。厳密な言い方なら、国税を徴収する目的は過度なインフレの防止です。副次効果ではなく、れっきとした主目的です。国税はお金の価値を安定させて乱高下を防ぐ統治技術であり、貨幣経済とともに考え出されました。国税は国家の財源ではなくて、過度なインフレを阻止する目的です。インフレの行き過ぎをおさえるブレーキ役。財源じゃない。

――国民の認識は税は財源であり、インフレなんて聞いたこともありませんが?

その勘違いで国が傾いています。日本はみんなが限界だとか、終わりが近いとのボヤキは、不必要な増税で疲弊した国情です。日本は閉そく状態にあるなどポエム表現でなく、国民の所得が増税で下がった実態を隠さず言うべきです。順を追います。まず国家は地域団体です。リーダーとなる、首相や主席や大統領がいます。そのリーダーの重要な役割は、自国通貨を発行して国民に配ること。その機関が各国の政府と中央銀行です。

――そういえば紙幣に、日本銀行券と書いてありますね?

お金の一種が紙幣ですが、日本で誰がどうお金をつくるかは、道が複数あります。まず政府は「国債」「財務省証券」を担保に「政府小切手」を発行し、「硬貨」も発行します。また日本銀行は「紙幣」を発行します。さらに一般銀行は「預金通帳」を発行します。これら主要3コースは全て貨幣と呼び、正体は借用証書たる使用権です。人が貨幣を生み、お金の総量を増やす。総量一定でなく増減します。国家レベルで、お金のシェアや取り合いはないのです。足りなければ増やす仕事だから、不足に泣くのは間抜けです。

――何となく天からお金が、地上に降ってくる気がしていましたが(笑)?

円のお金は、日本の判断で用意し、民間に配られ使われます。この時、ゴールドやダイアモンドを担保にしません。原資が必要なく、規模に上限もなく青天井です。日本政府はプリンターでお金を刷れるということです。刷っては配り、刷っては配りしても、BIS(国際決済銀行)との協調とは別に認められます。現に大規模にやっていて、各市町村に1億円ずつ配った『ふるさと創生事業』や、国民一人につき1万何千円の『給付金』がこのマネー創造でした。

――国民に配ったあのお金は、どんな金庫から持ち出したお金だったのですか?

天から降ったのです。2009年の『定額給付金』と、2015年と2017年の『臨時福祉給付金』は、銀行振込だったはずです。現金書留の紙幣ではなくて。「打ち出のこづち」方式で通帳にプリントして、国内のお金の総量に追加したのです。増やした分、何かが減ったり割りは食っていません。無から有が発生しました。備蓄倉庫が空になったり、ダムの水位が下がる現象は、国のお金では起きません。刷れば増えるからです。別のお金にしわ寄せはいかず。国内のお金は政府が故意に増減するものです。

――そうして国がお金を刷れるなら、税金を取らずに刷れば済みますよね?

さっきからその話をしていて、順を追えば理解は簡単です。国内では自国通貨の円は刷って増やせるから、お金不足で泣いたり、国税で回収する意味がありません。来日した要人の警護費が増えたから大学補助金を減らすとか、法人税を下げた代わりに消費税を上げるなど、奪い合いは原理的にいらない。税収が減ったせいで予算をカットするイメージは間違いです。自国で使うお金を自国で印刷出版できる事実に、ついていけない人が多すぎます。

――それなら、国はお金を増やし続けても許されますか?

許可も何も、現に世界も日本もやっています。アイデアどころか、人類は刷りまくり。刷るからGDPが増える。ところが刷るペースが大事です。短時間に総額が急増すると、インフレーションが行きすぎることがあります。インフレとは金余り現象です。お金がありすぎてダブついた状態。お金持ちが暗がりでお札に火をつけて照らす物語は、本人にとってお金の価値が下がりすぎの状態です。あり余るほどあり、もうどうでもよくて燃やしちゃえと。この超インフレ状態はだめで、理想は適度なインフレ状態です。過度でなく適度。

――その適度なインフレで、お金の発行量が多めだと何が起きるのですか?

消費が増えます。人は誰でも、飲んで食べて遊んで、歌って踊って、様々な体験を楽しみたいのです。好奇心や探求心や向学心です。もし金銭の余裕が増えれば、人生に悔いが残らないよう買い物に走ります。昭和末期のバブル時代に、ゴルフ、スキー、テニスの三大スポーツが盛況になったのもそれです。テニスの後はドイツ製ビールで乾杯。バブルでは土地担保で銀行融資が急増し、好景気となり好況でした。明らかなインフレとなり、猫もしゃくしもスポーツ三昧で用具が飛ぶように売れました。

――インフレ時に、逆に節約ブームは起きないのですか?

人はそうはなりません。節約したい気分はデフレ時に起き、その気分を不景気と呼んでいます。お金があれば節約しないで、1億円のスポーツカーを5台でも買うのが人間です。ネット動画を見ると、カーコレクションがアメリカに多いのは、国民全般が裕福だからです。日本も裕福なら、例えば地球に彗星が近づいた時に天体望遠鏡ブームが起きるでしょう。ヒットした天文ドラマ番組のテレビ通販で望遠鏡の爆買いが起きて、注文が十万台にも増えれば、メーカーは作りきれず供給が追いつきません。

――彗星が来ても、望遠鏡が間に合わないですね?

すると望遠鏡の値段が上がります。売価40万円が45万円になり、50万、60万と高騰します。この物価上昇はお金の値打ちが下がる意味です。仮に望遠鏡が2倍の80万円に上がり、食品や服や家も2倍に上がれば、お金の価値は従来の半分に落ちたも同然です。これは、日本国内で支払う円の実質価値が下がる意味です。ただし外貨1ドル110円が220円に下がる意味ではなくて。

――国内で給料が5倍に上がっても、物価も5倍に上がれば同じことですね?

適度なインフレだと給料が5倍なら、物価は4倍にとどまり、国民は裕福になります。ついに物価が同じだけ上がる飽和点が来れば、その時が政府がお金を刷り足せる限界です。最大の注意点は次のメカニズムです。望遠鏡の購入希望者が5倍に増えれば、「総需要」は5倍です。それに対して製造する「供給能力」が3倍止まりだと、商品を手にできない人が続出します。この状態での落差であるインフレギャップが急拡大すると、物価は急上昇して反比例するようにお金の実質価値が急落します。

――もし供給も5倍に増やせる力が国にあれば、インフレにならないわけですか?

そのとおり、その増産を経済成長と言います。例えば中東国にはオイルマネーの金持ちが多く、ガソリン価格はリッター千円にでも上がりそうで、でも現実は十円などと安い。石油の供給能力が大きいから高騰しません。一方で中東の地元アーティストの作品供給は少なく、でも欲しい人は多いから、望遠鏡と同じで美術は値上がりします。このようにインフレ限界は需要と供給で動的に変化し、数式化が困難です。さらにインフレには人心と気分がからみ、不確実な不確定性なのです。芸術と似て理解しにくい。

――インフレが極端になると、最後は何が起きますか?

売る物が底をつき、お金は紙くずです。第一次世界大戦後のドイツで起き、「五百億マルク切手」が登場しました。このハイパーインフレ(定義1万3千パーセント以上)は、敗戦で製造も運送も途絶えて望遠鏡も作れないせいでした。日本のインフレは、東京大空襲と沖縄と原爆で敗戦した翌年の、300パーセントが最高だそうで10円のチロルチョコが40円に上がる計算です。インフレはお金が多いだけでは起きず、供給能力が小さすぎる場合に起きます。インフレの原理は偉大な経済学者もまず誤解しており、原因は教科書の執筆者が間違っているからです。

――お金の分配量と生産量の増大は、生命線ですね?

国民全員が適度なお金持ちになれば、内需好調という買い物ブームで国が発展します。インフラ整備や技術開発や科学的発見やアート制作の創造力も高まり、強国となります。望遠鏡の精度が世界一だとか、一眼レフカメラや、CPUや半導体の製版装置、高純度シリコンなども。その経済成長の年間目標がインフレ率です。40万円の望遠鏡が翌年42万円に値上がりしたなら、インフレ率は年5パーセントです。理想は年2から4パーセントとされ、これが財政規律の指標です。ちなみにバブル時代のインフレ率は、最高が1991年(平成3年)の3.25パーセントだそう。

――バブル以上に消費者が物を買い、年10パーとか100パーに景気がはね上がればどうしますか?

その時に消費税の出番です。消費税は消費に課す制裁金です。好景気を速やかに火消しする目的で、購買意欲をそぐよう考え出された、買い物へのペナルティーです。購入者を叩く懲罰で人々がお金を惜しむようし向け、望遠鏡の購入を食い止めます。お金の動きを止めて市場を鈍化させる機能。全商品の売れ行きを落とす逆噴射の切り札が消費税です。消費税は消費にブレーキをかけて妨げる目的であり、財源をつくる目的は最初からありません。自国で刷れるお金を、回収しても金目の物なわけはないし。

――いったい日本の誰が、消費税の役割を理解できているのですか?

理解者は少ないでしょう。日本国民は消費税を収め、国の運営資金を上納してきたつもり。介護や保育の経費を支えた誇らしさで。「増税はきついが、皆で財政を立て直すんだ」とか「使い道が正しけりゃ許す」「良薬は口に苦しの消費税」は笑い話です。景気の冷却スプレー役の消費税を、凍傷の足に吹きつけるドタバタコント。足を切り落とすハメに。名門大企業も先進ハイテク企業も、老舗料理店も有名長寿雑誌もロングセラー銘菓も、緊縮財政と増税で起きた消費削減で消えて、笑うに笑えませんが。

――消費税の勘違いは、外国も同じ調子ですか?

実はアメリカでは正しく運用されています。日本の消費税に当たる付加価値税は、国税の導入が否定されてきました。中央銀行相当のFRB(連邦準備銀行)もまたドルを生み出せるから。国レベルでの消費税はナンセンスと、アメリカでは認識されているようです。輸出と輸入の不合理も理由のようです。

――アメリカに消費税はないと、日本で消費税導入の頃に話題になったような?

3パーセントで起きるビックリマンチョコ現象のあの頃です。ところがアメリカでも各州に地方売上税があります。州ではドルを刷れないから、財源調達も兼ねます。日本の都道府県市町村の消費税の地方税分と似たポジションで。特徴は州ごとに税率が異なることや、よく変動すること、また税率が細かい端数です。5.42パーセントなどと。

――同じ消費税でも、日本とはずいぶん違いますね?

人口集中の抑制やインフレ率の素早い調整など、目的意識があります。ニューヨークやカリフォルニア州は税率が高く、オレゴン州はゼロ。税率変更は所得税なら年一回ですが、消費税だと調整がスピーディーで。ということはアメリカは、税率を上げ下げする使い方を知っています。日本は常に上げ続けているから、使い方を知らないはず。何かこれ美術分野で、模写を続けて巨匠になれる程度の心得で一応回る、業界裏事情の吐露みたいな感じ。

――日本の消費税は国税も含み、恒久化して率が固定で、キリがよい数字で、全国一律ですが?

そのラフな仕様は、誤解含みの導入を想像させます。2014年からの消費税8パーセントは、国税が6.3パーで、地方税が1.7パー。集める意味がない国税なのに重視されるのは、法人税減税を穴埋めする帳尻合わせです。日本で税金が勘違いされてきた証拠は、「国の財源」発言に誰も突っ込まない点でした。「税金の無駄づかい」「お金は使えば減る」と、誤った危機を国民は信じて。世界記録のデフレ不況で、貧困の死者が目立った平成時代でした。

――平成時代の日本の財政は、何が間違いでしたか?

デフレ時に増税した、これがあべこべです。デフレなら減税してお金を刷って投入して消費をあおる。インフレなら増税してお金を回収して消費を冷ますのがハウツー。なのに日本は正反対をやりました。凍傷の手足に冷却スプレーをかける間違いです。やけどの患者にやる治療を、しもやけの患者にやっている。

――日本は問題が山積みで、途方に暮れますね?

日本の問題は山積みでなく、一個の失敗で経済が回らないだけです。漫画誌『少年ジャンプ』が売れない原因と、福島第1原発が爆発した原因は同じ原因です。それは買い控えです。『少年ジャンプ』は読者が買い控えた。福島第1原発は政府が防潮堤を買い控えた。デフレ下では人はお金を大事にして物を買い控えるから、経済縮小します。国の全てが金欠になり、だから民間だけでなく役所でも、故障や事故や不正や偽装や詐欺や暴力が増えます。平成時代の代名詞は「ブラック」と「オレオレ」でした。一方、減るのは創造性。全ての原因はデフレ不況です。

――ベーシックインカム論争でも、財源はどこにあるのかという批判の声が多かったですが?

財源はコンピューターソフトです。『定額給付金』の恒久化がベーシックインカムです。文明国ではAI化で人間は不要になり、失業者が増えすぎて大勢の餓死が予想され、各国で検討されています。新自由主義経済のグローバリズムでEUなど先進国は貧困化し、テロが連続したことも理由でしょう。一方日本では「財源がない」「資産家の富を庶民に回すな」「不要な人材にお金の給付はもったいない」の大合唱に終始しました。一定量のお金を奪い合う中世的な思考が、日本人からまだ抜けていません。

――ベーシックインカムの給付額も、やはりインフレ防止の観点で決まりますか?

当然です。月7万円か12万円かは、12万円なら税率は高めで、EU以前の北欧みたいな感じです。日本でベーシックインカムの理解が進まないのは、国税が財源だという、年貢米との混同です。MMTに加えた提案JGPと同様に、自国通貨を増刷しインフレ率で縛る道理も理解されにくい。(編集注:JGPはジョブ・ギャランティー・プログラム、国が仕事を用意するピラミッド建造の財政手法)。

――日本人がお金の仕組みを、ほどんど理解していないのはなぜですか?

ソース源が古典だからです。経済学と社会科教科書が現代に合いません。具象絵画のコツを会得して、抽象のポロックがわからないような感じか。具体的には、マネーを取り合う思想は古いのです。ソースが海外書籍なので、世界各国に同じ誤解があります。外国に、なぜ日本は財政破綻しないのかの動画があります。1100兆円の赤字が崩壊しないのはなぜか。「日本の借金は日本円だから破綻したくてもできない」の正解の一方で、「日本は資産も多い対外債権国だ」など論点ずれした意見も見ます。

――難しい経済を、今すぐ理解するコツはありますか?

(1)貨幣は貸借契約だけで誕生。(2)国の財源は印刷機。(3)徴税は財源ではなくインフレ抑制。(4)景気が過熱時のストップ爆買いが消費税の機能。当代フェイク情報は、権威ある名著や由緒ある報道にも多いもの。芸術をわかりたい時に、権威ある書物を読んで覚えるよりも、人類九千年の作品変化を見た方が確実なのと同様です。

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